第34話 犯人の告白

「なんでこんなことをしたんだ?」

「うーん、前田さんのことが嫌いだから。それでいい?」

「好きな人が前田さんのこと好きだったから? その話は知ってるわ」

「まあ、それもあるけど…… それは理由の1つでしかない。それよりもずっと前から私は前田さんのことが好きじゃなかった。どうしてあんなに完璧でなんでも出来るんだろうって。私は高校に入って授業についていくのに必死なのに、あの子はちょっと授業聞くだけで完璧に理解して、他の子に教える余裕まであって。その上運動神経も良いとか超人じゃない? 私との差はなんなんだろうって思っちゃうよね。完璧な嫉妬であることは理解しているんだけどね。どうしても抑えられなくて」


「なるほど…… そういう話か。それなら高校入学したらすぐの話だろ。なぜ今こんなことをしようと思ったんだ?」

「盗撮騒動があったからよ。クラスの色々なところで話題になってたから知って、掲示板を見たらあの子の写真が投稿されていて。これに乗じて何かしたら盗撮犯に罪を押し付けることができるかなと思ったの。


水着を盗んだのはたまたま思いついたから。すぐにバレることはないし、精神的なダメージも大きいと思った。盗撮犯はどうせいつも掲示板を見ている川崎くんや三橋くんだろうと思ったから、水着を盗むっていうのもリアルだと思ったしね。そういうことしそうじゃん?」

「そうか。とりあえず理解したよ」

「私のことはどうするつもり? 警察に突き出すの?」

「いや、そこは前田に任せるよ。とりあえず素直に前田に謝れるか?」

「…… わかった」

「じゃあ私が前田さん呼んでくるわ。今解決した方がいいでしょう?」

「そうだな。そうしよう」

 伊藤が前田に声をかけている。前田が1人でベランダに向かってきた。


「どうしたの?」

「ああ、水着の件だよ」

「村上さんが犯人ってこと?」

「ええ、私が犯人よ」

 パシーン。前田が村上に強烈なビンタを一撃。俺達はびっくりして声も出せない。伊藤も目を見開いている。

「ふう、とりあえずこんな感じかな。後は村上さんと2人で話すね?」

「わかった。伊藤、戻るか」

「え、ええ……」


「中々強烈なビンタだったな。ビンタなんてTV以外で初めて見たよ」

「私もよ。前田さんが手を出すとは思わなかったわ。まあそれだけのことをしたっていうことね。村上さんに同情はないけど」

「そうだな。後は2人で円満に解決して欲しいよ」


 その後、2人でどのような会話がされたのかはわからない。しばらくの間2人で話し込んでいた。ただ、こちらも騒動にはならず、その場で収まったようだ。午後の授業、休み時間の間、2人の様子はいつもと変わらないようだった。


 今日は部活が休みなので俺はまっすぐ家に帰る日だ。

「今井くん、今日は部活休み?」

「ああ、そうだ。まっすぐ家に帰る予定だよ」

「そう。じゃあ校門までついていくね」

 教室から出る時に前田から声をかけられる。2人で校門まで一緒に向かうことになった。校内で一緒にいるのは、騒動にならないか、と不安だったが、まあ事件が解決したばかりだ。話したいことが色々あるのだろう。急に突き放すのも心配だ。噂が立ったら…… その時はその時だ。


「村上とは解決したか?」

「うん、大丈夫。2人でちゃんと話しあったよ。水着代は返してもらえることになった。まあ仲良く……とはいかないけど普通のクラスメイトとして過ごせるかな?」

「そうか、それは良かった。無事解決して何よりだ」

「なんか、録音もしてたらしいね。それも有ってすぐに全部話してくれたよ。とりあえず全部無事に解決して良かった。安心して学校に通えるよ。ありがとう」


「ああ、また何かあったら言ってくれ。まあもう何もないことを祈るが」

「そうだね。もう平和に過ごしたいよ。とりあえず犯人を追い詰める井口君かっこよかったよ。地頭がいいんだね。」

「伊藤のおかげでもあるがな。あいつも色々やってくれた」

「そうだね、伊藤さんにも感謝しなきゃ。とりあえず2人には大変感謝しています。じゃあ私は部活に行くね。またね」

「ああ、熱中症には気をつけてな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る