第21話 遊園地での待ち合わせ

前田と打ち合わせをした結果、日曜日がちょうどお互いに部活がオフだったので、日曜日の朝に遊園地で集合することになった。

「楽しみだね! 遅刻しないでね!」

前日夜の前田のラインである。遅刻は許されないな。俺はいつもより早く起きるためにスマホのアラームを大量に設定して寝るのであった。おかげで問題なく起きれたが、無駄に緊張したため疲れが取れない朝の目覚めである。


「行ってきます」

先日伊藤と購入した一張羅?のユニクロを着て家を出る。今日も灼熱で、コンクリートの照り返しが非常に熱い。みーん、みーん。蝉の鳴き声が夏を感じさせるが、これはあまりにも夏すぎる。まだ朝でこの温度なら昼にはどうなってしまうのか? 遊園地でアトラクションに並んでいる間に暑さで倒れてしまうかもしれない。飲み物を大量に買っておかないといけないレベルだ。


遊園地まで電車で1時間。暇なので伊藤にLINEを送る。

「緊張してきた。最初どんなテンションで行けばいいと思う?」

すぐに既読が付いた。さすが伊藤は休日でもきちんと朝は起きているようだ。俺なら昼まで寝ている可能性がある。それとも俺のために起きていてくれたのか? 

「ハイテンションで、語尾にぴょんって付ければいいと思うよ」

 前言撤回である。完全に真面目に回答する気がない。

「わかったぴょん」

俺はそう返信した後、スマホをしまって寝ることにした。乗り過ごさないようにアラームを設定しておけばバイブで目が覚めるだろう。目を閉じて電車の流れに身を任せる。ゴトン、ゴトン。揺れが気持ちいい。俺はすぐに眠りについた。


 ぶー。ぶー。もう時間になったようで、アラームで目が覚める。外の景色を見るとだいぶ田舎になっていた。田園や畑が目に入る。都会よりはちょっと涼しいかもな…… そんなことを考えながら駅に到着したので降りる。全く涼しくはない。というより凄まじく熱い。完全に期待外れでがっかりだが仕方ない。ただ、風が吹くと気持ちが良いのは都会との差かもしれない。


「あ、今井くん」

声をかけられたので振り向くと前田だった。同じ電車だったのか。

「同じ電車だったんだね。全然気づかなかったよ」

「俺もだ、言えばよかったな」

前田はミニ丈のワンピース姿だった。普段は制服しか見ていないので初めて目にした格好だがよく似合っている。特に田園風景をバックにすれば完全に何かの映画のヒロインだな。

「どう、私服似合ってる?」

「ああ、よく似合ってるぞ。なんかのヒロインみたいだ」

「ヒロインって何よ、もう」

少し顔を赤くした前田に小突かれる。ヒロインという言葉は失敗したか? よく考えると褒め言葉ではないかもしれないな…… しかし訂正すると泥沼にハマりそうだ。とりあえず流して別の話をしよう

「しかし熱いな。こうも熱いと客も少ないかもな」

「いやあ、ここプールもあるからねえ。プールのお客さんが多いんじゃない? アトラクションは確かに少し少ないかも」

ふと前田の手を見ると小さい扇風機を持っている。

「それ、扇風機か?」

「そうだよ。最近流行ってる持ち運び型の扇風機。並ぶ時間とか暑いかなあと思って持ってきたんだ。これは正解だったね」

「そんなのあるのか。俺も買っておけばよかったな」

「たまに風を送ってあげるよ」

 そう言ってこっちに扇風機を向けてくれた。風が気持ちいい。これは通学の時も使えるかもしれないな。すっかり欲しくなってしまった。


開園少し前に着いたが、すでにチケット窓口には並んでいる人がいる。ただ思ったよりは少なく、30人くらいか? やはりこの酷暑の影響があるに違いない。俺達は列に並んで開園を待つ。周りを見渡すとカップルと思われる若い2人組が多い。もしかしてここは有名なデートスポットだったりするのだろうか? そもそも遊園地がデートスポットなのか? 後で伊藤に聞いてみようかと考えたが、伊藤がそんなこと知っているとは思えないな。男の気配ゼロの女子だ。聞くのは失礼に当たる可能性がある。


「こんな暑い中毎日テニスやっているんだな。倒れるんじゃないか?」

「ほんとだよ。日焼け止めどれだけ塗っても焼けちゃうくらい暑いね。まあ最近は暑すぎて、朝か夕方だけ活動する日も多いね。日中練習で体調不良者が続出した日があってね……」

「ああ、やっぱりそうだよな…… 真っ昼間は殺人的すぎるからそれがいいな」

「水泳部はその点いいよね。気持ちよさそう」

「そうだな、水は気持ちいいんだが……プールサイドは灼熱だぞ。移動する時は足裏が火傷しそうなレベルだ。そこはどうにもならないんだよな」

「ああ、確かに水泳の授業でも大変だったよ。裸足だもんね」

「定期的にプールサイドに水を撒くんだが、すぐ蒸発してしまうんだ。出来るだけプールから出たくなくなるな」


暑いというテーマだけで話は尽きることがない。そんな話をしていると、開園時間になり、続々と中に人が入っていく。俺たちも無事チケットを購入することができ、スムーズに入園することができた。チケット代は割り勘だ。全部払ったほうがかっこいいのは理解しているが遊園地のフリーパスは高校生には高すぎる。

 

 

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