第10話 学年1の美少女との電話 〜後編〜

「そういえば、今井くんはいつも伊藤さんとお昼ご飯を食べてるの?」

「そうだな。今年一緒のクラスになってから仲良くなってな。お昼ご飯を食べるというよりは雑談? 議論? をしているという感じだが」

「へー。伊藤さん討論部だもんね。議論とか得意そうだね」

「そうだな。なんだかんだで言いくるめられることが多いよ。どんな主張しても論理的に真っ直ぐ打ち返されるよ。さすがディベートが得意というだけあるよ」

「議論するのが好きなの?」

「いや、特にそういうわけでもないんだがな…… どちらかというと負けず嫌いだからかな。いつか伊藤をボコボコに言いまかしてやろうとしている、という感じだ」


「なるほどね。私はなんかバーっと言われるともういいやってなって意見曲げちゃうタイプだからなあ。はっきり戦える伊藤さんはすごいね」

「まあそれが日常生活では正しいと思うぞ。正論で叩き潰されるのはなかなかメンタル的にしんどいからな」

「あはは。そうだね。でもそれが好きっていう今井くんは変わってるね」

「筋トレみたいなものだな。負荷をかけるほど鍛えられる気がするからいいんだよ。心の筋トレだな」

「筋トレ好きなんだ? 言われてみたら結構筋肉あるもんね」

「ああ、筋トレはいいぞ。やればやるだけ結果が目に見える形で出てくるからな」


「そういうのいいよね。私もダイエットとかついつい夢中になっちゃう。体重1kg減らそう! みたいな感じだね」

「同じだろうな。目標が明確だと努力できるからな」

「その点、人間関係は難しいよねえ。好感度が数値で現れるでもないし、何がどうなって嫌われたり好きになられたりするのかもわからないし」

「まあ、そうだな。他人の感情だけはコントロールできないからな」


「出来ればクラスの全員と仲良くしたいけど、どうしても合わない人いるよね。嫌われている人もいるし」

「そうなのか。まあ男絡みは仕方ないよなあ」

「まあ、仕方ないよね。私にはどうしようもないよ。その子の気持ちが切り替わってくれることを祈るしかないからね」

「まあ全員に好かれる必要はないんじゃないか?」

「そうだね。それはそうなんだけど…… せっかく同じクラスだから仲良くしたいじゃん。もうクラス変わったら会わなくなるかもしれないし」


「それはそうだな。でも全員というが異性と仲良くするのは難しくないか? 俺なんか伊藤と昼一緒に食べているというだけで付き合っている扱いされるぞ」


「まあ二人でお昼ご飯はちょっと特殊だけど…… まあ難しいね。なかなか距離感をきちんと確保しないと勘違いさせることにもなるし。その辺りは気をつけてるよ」

「やっぱり失敗したことあるのか?」

「あるある。あなたに興味があるわけではないですよ、という一線をちゃんと引いておかないとややこしいことになるよ。後、他の子の彼氏にも気を使わないと。無邪気に仲良くしようとして、女の子から怒られたりすることもあるからね」


「なるほど…… 大変な世界だな」

「大変だよ。溝口くんみたいなお調子者でも、仲良くなって好きになられたら面倒だから他人行儀にならざるを得ないしね。程よい距離感がポイントですよ」

「勉強になります。先生」

「ええ、私は先生です。あー…… 眠くなってきちゃった。もうこのまま寝ようかなあ」


「風呂には入ったのか?」

「うん、もう全部終わったから後は寝るだけだよ。韓国ドラマでも見るかーって考えてたけど今日は多分このまま寝ちゃうなあ。早めに寝て朝練頑張ろうかなあ」

 前田の声が眠そうだ。囁き声になっている。


「テニス部も朝練あるんだな。走ったりするのか?」

「いや、試合形式で練習することが多いかな…… その時いる子とコートで打ち合う感じ。トレーニングする時もあるけどね……」


「あ、そうだ……。掲示板見た? なんか書かれたりしてるかなあ」

 そういえば、まだチェックしてないな。今日は盗撮されていないか確認しないと。俺は伊藤からもらったリンクを開き、掲示板をチェックする。


「今日は…… 見た感じ特に何もなさそうだな。前田の話もなさそうだ」

「そっか…… よかった…… また盗撮されてたらどうしようかと思ったよ…… まあ私より涼子の方が大騒ぎするんだけどね。私はまあ、隠し撮りくらいはどうってことないけど……」


「まあ心配になるよ。前田も無理するなよ。じゃあおやすみ、また明日」

「ありがとう…… おやすみ」

 プチっ。通話は終了した。俺はスマホを机に置いて勉強を再開する。次は英語だ。英単語の小テストがあるから暗記する必要がある。英語はどの大学を受験するにしても必須科目だ。しっかり勉強しないと。俺はノートに単語を書き写す作業を始めた。

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