それから、後日談

 少しだけ、空白期間の後の話をしよう。

 「ボク」は、ゲストハウスの管理人と共に、残りのラジオ体操に参加し続けた。


 それから、ゲストハウスにもお邪魔した。

 あの人魚と再会したり、カッパの子が遊びに来てくれたり、楽しい時間を過ごした。

 真夏日、クーラーの効いた室内でみんなでアイスクリームを食べた。以前出会った白くまのことを思い出す。あれから一度も姿を見ていないので、さっさと故郷に帰ったのだろう。


 姿を見ていないといえば、あのろくろ首の女の人も、めっきり見かけていない。

 臨時職員と言っていたので、また夏の日にどこかで会うこともあるはずだ。肝試しとかで。


 お盆を迎える頃に、町内のラジオ体操は終わりを迎える。

 そして「ボク」の手には何故か、ラジオ体操皆勤賞の図書カードが握られていた。


「ボクが休んでた時? あん時ね、ラジオ体操の番組が電波ジャックにあったせいで、やろうにもやれなかったのよ。

 だから週明けから仕切り直しってわけ」


 町内のおばさんにあっけらかんと言われ、「ボク」は何も言えなかった。

「ところでボクは何してたの? 旅行?』

そっちは敢えて何も言わなかった。まあ、言うほどのこともないからね。


 そういうわけで、「ボク」は無事にラジオ体操皆勤となった。

 図書カードの使い先はまだ決めてない。


 もうすぐ夏休みが終わる。

 お盆が明けてから、「ボク」はすっかり遅起きになってしまった。


 でも、たまに早く起きたとき。

 ふと人魚の鱗を取り出して、朝日に透かしてみたりする。

 特別何をするでもなく、それが金色に染まるのを、ただ「ボク」は見ているのだった。


 

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金色礼賛 暁野スミレ @sumi-re

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