第10話 お兄ちゃん、歯磨きするで!

「――お兄ちゃん! いつまで寝とるん? 寝る前に歯ぁ磨かへんと虫歯になるで」


「ようやく起きてくれた。ほら、歯磨き歯磨き」


「『もう少し寝たい』? 何言うとるん! お兄ちゃんが寝起き弱いんは知っとるけど、歯磨きはちゃんとせえへんとあかんで。ちょっと待っとき。ウチが歯ブラシ取ってきたる」


「はい、歯ブラシ。歯磨き粉もつけといたから」


「全然磨けてへんやん。もう、仕方ないからウチが磨いたるわ。ほら、口開けて、お兄ちゃん。はい、あーん」


「偉い偉い。そのまま口開けといてな」


「しゃかしゃか、しゃかしゃか――気になるとこない? あっ、顔動かしたら危ないで。歯ブラシが喉突いたら大変やろ」


「人の歯ぁ磨くのって難しいな。歯茎痛いとかない? 痛かったら言うてや。優しくブラッシングするから」


「ごしごし、ごしごし――甘いもん食べたから、しっかり歯ぁ磨かへんとね。虫歯になって痛い思いするんはイヤやろ? 隅々まで磨いたるから覚悟しいや」


「ふふっ。お兄ちゃん、耳だけやなくて歯茎も弱いんか? くすぐったそうな顔してるで」


「えへへ。お兄ちゃんの歯ぁ磨くの楽しいわ。今日お兄ちゃんに会いにきて正解やった」


「……お兄ちゃんはどう? ウチに会えて嬉しい?」


「そうなんや……。えへへ。よかったわ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る