アンディが薫に気づいた
アンディが薫に気づいた。
「おお、薫! 男優の尻えくぼに見とれていてすまない」
「いきなりキモいんだよお前」
「これは先週発売された作品だが、やはりシアターで映すと段違いだ。男優の肉体美がまるで金剛力士像だよ」
彼らは「芸術鑑賞」のために「あ~ん(はぁと)」な映像を集めている。家の倉庫とハードディスクに万(億?)単位の数が保存されているというから薫は彼らと疎遠になりたい。
ちなみにこの国で未成年がそういうのを持ったり見たりすること自体は一応違法じゃなかったりするらしい。知らんけど。
ヴィッキーが子供をさとすみたいに言った。
「わかんないかな~。ほら薫、この女優のド派手なあえぎ方、バカにするほうがバカだよ。歌舞伎で大見得を切るのと一緒でしょ」
「AVを歌舞伎にたとえるお前のほうがわからん」
「AVは世界の夢! 幻想の光!」
「なわけあるか」
「某球団のM選手もAVファンだったよ?」
「わあああやめろ! 実在の人物、団体のイメージを下げるかもしれないネタはよろしくない! M選手のその話は駄目! ハイこの話終了ーッ!!」
薫は……それから黙り込んだ。
野球をできない今は正直会わせる顔がないのだ。
『あ~ん? そこすごい、いい! あふん、あはん、いやあ来ちゃう!! 来ちゃう!! わあああああ来る来る来るうううううううううう』
「……とっとと一時停止して帰れよ」
「薫、芸術は途切れちゃいかん。多河家の家訓・第三条は『AVの再生停止は、これを死刑に処す』だ」
「どんな家だよ」
「あ~ん(はぁと)」なアレコレが終わるまで待たされた。
やがてスクリーンに終劇の文字が出た(変なAVだ)。
するとヴィッキーが挑戦的な目をして言った。
「――ねえ薫。バット貸して?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます