まだ老け込む歳ではないの章
王乃タワーの一階エントランスに
王乃タワーの一階エントランスにホバークラフトが停まって側面タラップが展開され、薫とミルチャが降りていく。
「ソウイエバ坊ッチャマ、オ客ヲ、しあたーるーむニ、オ通シシテマス」
「シアタールーム? ってことは……」
「アノ二人デース」
「あいつらか……」
早く帰らせよう。
戦闘機なみの加速をするエレベーターで地上八〇階へ上がり、降りるとそこはほぼ映画館だ。チケットやポップコーンの売り場があり常駐スタッフが「お帰りなさいませお坊ちゃま!」と一礼する。
この施設はハリウッドの大作からマダガスカルの自主製作まで全映画を公開前に観られる。ホールディングス傘下の研究所による航時素粒子技術がテスト運用されているのだ。
客がいるという四番シアターに入る。
立体音響の「あ~ん(はぁと)」な声が聞こえてくる。スクリーンに映るのは、全裸で激しくグラインドする男と女、ぶつかりあう裸体、エロスのわななきのハイビジョンである。
客席からスクリーンに真剣なまなざしを向ける二人がいる。薫と同い年の双子だ。
「変わんねえな、AV兄妹……」
兄・
妹・多河
どちらも野球の超名門・
日本に住んでいて米武劉須高校を知らないのは外国人技能実習生くらいだ。
そしてふたりは先祖代々日本に住んでいて西洋っぽさは全くないのだが勝手にアンディ、ヴィッキーと名乗っている。本名が何だったか薫はパッと思い出せない。
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