トス。ブォン!! スカッ!!!

 トス。

 ブォン!! スカッ!!!


 トス。

 ブォン!! スカッ!!!


 今までトスした六球が途中でやめたビリヤードのごとく地面にならんだ。

「さあ次こそは!」

「……」

 薫は逆に気持ちがすっきりした。彼のセーラー服の襟には王乃家緊急連絡用・八木アンテナ式ボソントランシーバーが仕込まれている。それをうなじのボタン一つで立ち上げた。

「もしもしミルチャ? 迎えに来てくれ。衛星で場所わかるだろ」

「ああっ王乃さん!? なぜ帰ろうとっ」

「うるさいっ門川さんに謝れ! あなたに一瞬騙されたのが恥ずかしいです! 二度と誘わんでください! アデュー!」

「あ、だめっ、うわーん王乃さん! せめてお友達から!」

 すがりついてくる円佳。

「アデューはもう会わないときに使うフランス語です!」

「わあああああああああああびゃああああああああみゃあああああああああああ」

「泣くな! バットで小突くな! げっ、鼻水きたねえ!」

 まもなく、多摩川を超速でさかのぼった王乃家所有の百メートル級変形ホバークラフト駆逐艦(船首に巨大ドリル付き)が河川敷に上陸し、円佳らの野球冒涜団をどっかーんと蹴散らした。

 二度とここに来ない。来てたまるか。

 固く誓う薫だった。



 東京都港区、眠らない大都会。

 高度経済成長やバブル経済、長い不景気、ポップカルチャーなどの歴史をずっと見守ってきた東京タワーが優しいオレンジ色の光でライトアップされている。

 そのそばに雰囲気ブチ壊しでそびえたつのは高さ二五〇〇メートル、虫の卵みたいな形をして約一六八〇万色に発光する未来的高層ビル「王乃タワー」だ。ホールディングスの本部と王乃家の自宅を兼ねている。

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