シュアなバッティングの章
わたしの家が立川(東京都立川市)でここに近いから
「わたしの家が
リヤカーの荷物は貧相な野球道具だった。古い軟式ボールが二十個ほど、傷だらけの金属バットが三本、積み重なってペタンコになったグローブが十数個、一・二・三・本塁の薄っぺらいベースが一枚ずつ、キャッチャー用の汚れたマスクが二つ――たったそれだけ! ちゃんとした野球をするならヘルメットやスパイクシューズ、キャッチャーのミットや防具が不可欠なのに。
さておき薫は股間をおさえてうずくまり、しくしく泣いていた。
「うう……女の子になっちゃう……」
「王乃さんごめんなさい、無理に引っぱって。太ももの内側って洗濯バサミとかで挟んだら結構痛いわよね」
「ふつう洗濯バサミで太もも挟まないですけど……あー痛い、吐きそう……もはや女の子の日だよ……」
「ロ○ソニン飲む? 持ってるけど?」
「いらないです……」
地面をいじりながら、
「あー、今日は悪夢だ……変な先輩に捕まって何度も激痛食らってその次は野球だってよ。どうなるんですじゃ……」
「王乃さん?」
「そうか、夢! これは夢でござる。ただの夢でござる。かようなことがありえようはずがござらん。夢だ、夢だ、夢だ夢だ夢だ、ゆ~め~で~ご~ざ~る~ッ」
「一九七九年の映画『柳生一族の○謀』のネタはわたしたちの世代じゃ誰もわからないと思うけど……」
「じゃあ野球ネタはわかるんかって話ですよ! ったく、どの読者層を意識してるんだが。今どき野球に詳しくない人は
「しっかりして! 目が変よ!」
「はっ!! 俺は何を言ってたんだ……?」
揺さぶられて薫が正気にもどる。
ただし野球をしたがる女子たちに囲まれている現実は変わらない。
どこまで俺を苦しめるんだろう、野球は。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます