「うちは神居ほのか。都立善前紫蘭高校のエセ京都人どす」

「うちは神居かみいほのか。都立善前紫蘭ぜんぜんしらん高校のエセ京都人どす」

「全然知らんのエセ京都?」

「京都弁ってかわいいなあとおもて、出身でえは栃木やけど真似しとるんどす」

「変な人……」

「よう言われますわぁ」と微笑む。

 確かにエセっぽいかも……でも本物の京都弁って聞いたことないなあ……と薫は思った。

「あんさん、うちのエンちゃんにさらわれたとき、しびれ○な食らいましたやろ?」

 エン? あ、まどを音読みすればエンになる。

「エンちゃんって円佳先輩?」

「せや。あの花粉の成分を体から出すには水を飲ませて全身マッサージせなあかんらしいんよ。せやから皆で揉んどるんどす。もうじき動けるはずやけど」

「まだ全然……」

「うちがもっと揉んだるわ。どれどれ……アキレス腱からふくらはぎ、太ももへ、リンパを流すみたいに……どうどす? 効きます?」

「触られてる感覚はあるけど……」

「太ももの付け根も丹念に……あら? こんなところにウズラの卵みたいな大きさで、上下左右によく動いて、柔らかい袋に包まれたみたいなボール状の物体がふたつ……おうちの鍵のキーホルダーやろか?」

「痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!」

 薫、飛び起きる。

「ひゃっ!?  なんや!?」

 ほのかが目を丸くする。

「そないに騒ぐなんて……ようわからんけど、うちのマッサージが効いたんか……?」

「そ、そうですね……あー痛え、『玉砕』するとこだった……」

 ともかく神経が一気に覚醒したらしく麻痺が治ったので、薫は周囲を見た。

 女子たちの服装はタンクトップ、ブルマ、作務衣、レオタード……動きやすそうだが統一されていない。スポーツをする団体だとしたらこれは締まりがない。

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