アツアツ、モフモフ7
「す、すごい戦いですね……」
フェンリルがレッドフォックスレックスの首に噛み付いて地面に叩きつけると、レッドフォックスレックスはフェンリルのことを下から蹴り上げる。
息もつかせぬ戦いでフェンリルとレッドフォックスレックスが互いにボロボロになっていく。
「お、おぉ……」
フェンリルがレッドフォックスレックスの首を咥えて振り回した。
首の肉がちぎれてレッドフォックスレックスが飛んでいって転がる。
「……行くのか?」
立ち上がれないでいるレッドフォックスレックスを尻目にフェンリルは圭の頬に鼻の先を擦り付けた。
なんとなくだけど別れの挨拶のような気がした。
レッドフォックスレックスは光の柱の中に入っていくと空を見上げてグンと飛び上がった。
全身が光を放ってフェンリルが光の玉となる。
そしてそのまま光の玉となったフェンリルは天へと昇っていった。
『シークレットクエスト!
フェンリルの卵を守れ! クリア
フェンリルに認められろ! クリア
フェンリルが出てくるまでレッドフォックスを倒せ! 50/50 クリア
フェンリルを約束の地まで運べ! クリア
約束の時を待て! クリア』
その瞬間圭たちの前に表示が現れる。
『シークレットクエスト達成!
貢献度
1位平塚夜滝
2位村雨圭
3位八重樫カレン
4位バーンスタイン薫
5位フィーネ
6位弥生波瑠
ヒドゥンピースの条件達成!』
「えーーーーっ!」
どうやらシークレットクエストをクリアしたようだ。
シークレットクエストの貢献度も出たのだがそれをみて波瑠が驚いている。
「なんでーーーー!」
貢献度で波瑠は最下位だった。
結構頑張ったのにと思うのだけど文句を言う相手もいなくて波瑠は悔しそうな顔をして表示を睨みつけている。
「なんで!」
「俺に聞かれても……」
むしろ圭もなんで自分が2位なのかと不思議である。
夜滝が魔法でレッドフォックスを防いでいたことはみんな分かっている。
そうした水の魔法でレッドフォックスを倒してもいたし貢献度が高くても納得である。
一方で波瑠はちょっとレッドフォックス相手には厳しい側面があった。
体が燃えているのでナイフで戦うのは難しい。
ただ偵察などの仕事はしていてくれた。
飛んで周りの状況見るとかそういうことは貢献度にあまり反映されないのかもしれない。
「みなさん、あいつまだ生きてます!」
シークレットクエストのことも気になるがレッドフォックスレックスはまだ生きていた。
もはや体を炎にする元気もなく首から血を流しているけれど、立ち上がって圭たちのことを睨みつけていた。
睨みつけられているが最初のような圧力は一切ない。
この状態ならば勝てるのではないかと圭は思った。
「やるぞ!」
レッドフォックスレックスも逃げるつもりはないようだ。
フェンリルが作ってくれた好機を逃すまいと圭たちは一気にレッドフォックスレックスに向かっていく。
「こんにゃろー!」
波瑠は貢献度で最下位だった不満をぶつけるように空から襲いかかってナイフを振り下ろした。
フラフラとしたレッドフォックスレックスはナイフをかわすこともできず波瑠のナイフが突き立てられた。
「おりゃっ!」
カレンがメイスでレッドフォックスレックスの頭を殴り飛ばし、圭はフェンリルがつけた首の傷を狙って剣を振る。
「フィーネ、首を狙え!」
「ウン!」
大きく抉れた傷は圭の攻撃も通じた。
フィーネの大きな鎌なら致命的な一撃を与えられると圭は判断した。
「邪魔させなねぇぞ!」
危機を察したレッドフォックスレックスがフィーネに前足を振り下ろすが一足早くカレンが盾で防御する。
最初は受け流すのもいっぱいいっぱいだった。
けれど弱ったレッドフォックスレックスの攻撃は受け流さずとも真正面から受け切ることができた。
「ピッピッピ〜!」
邪魔がなくなったフィーネは弧を描くように大きくスイングして大鎌を振り上げた。
振り上げられた大鎌の先端はレッドフォックスレックスの首の傷に突き刺さった。
深々と突き刺さった大鎌の先端はレッドフォックスレックスの首の逆側から飛び出す。
「トドメだよぅ!」
夜滝の前に水の塊が作り出されていた。
グッと一度杖を引いて勢いよく突き出すと水の塊が飛んでいく。
レッドフォックスレックスに向かいながら水の塊は形を変えてフィーネの大鎌にも似た三日月状の刃を成した。
水の刃は大鎌が刺さって苦しそうにしているレッドフォックスレックスの首を通り過ぎた。
レッドフォックスレックスの動きが一瞬止まり、ズルリと首が地面に落ちて転がった。
「……倒した、のか?」
「首が落ちて生きてるバケモンじゃなきゃな」
「わっ! なになに?」
レッドフォックスレックスの死体を遠巻きに眺めて本当に死んだのかと警戒していると水の壁の外にいたレッドフォックスたちが急に遠吠えを始めた。
大量にいるレッドフォックスが一斉に吠えると水の壁が揺らぐほどの音が鳴り響く。
圭たちは異常な遠吠えに集まって警戒をする。
「…………えっ?」
遠吠えが止んだ。
水の壁の外に見えていたレッドフォックスがいきなり走って離れていく。
一体だけでなく周りにいた全てのレッドフォックスが一斉にいなくなってしまった。
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