アツアツ、モフモフ8
恐る恐る夜滝が水の壁を解除してみるとレッドフォックスの姿は一体もなくなっていた。
「レッドフォックスのボスが倒されたからだろうかねぇ?」
シークレットクエストをクリアした時点ではレッドフォックスはまだ周りにいた。
レッドフォックスレックスを倒したら急にレッドフォックスが逃げ出してしまった。
ボスとなるレッドフォックスレックスが倒されたから逃げのだろうかと夜滝は考えた。
「まあとりあえずこれで終わりなら……」
急な幕切れ感はあるけれど大量にいたレッドフォックスを倒さなくていいのならそれに越したことはない。
『シークレットクエストの達成報酬を配布します』
終わったのだとホッと息を吐き出した瞬間新たな表示が現れた。
貢献度によるシークレットクエストの報酬がもらえるようだ。
みんなの前に光が差してきてその中に宝箱が現れる。
中のものを取れと言わんばかりにかぱっと宝箱の蓋が開いた。
もう過去に経験していることなので遠慮なく宝箱に手を突っ込んで報酬をいただくことにした。
光で見えにくいがそこの方に何かがある。
グッと手を入れると手が触れたのでそっと掴んで手を引き抜くとそれは折れた刃の一部であった。
思い切り掴まなくてよかったなとちょっとだけヒヤリとした。
「これって……」
すぐにそれがなんなのか圭には分かった。
『折れたラクスの剣の刃
女神ラクスの力が宿りし剣の刃の一部。
かつていたラクスの代理者が使用していたものであるが悪魔との戦いで剣は折れてしまった。
強い神性を宿していて悪しき力を払う効果がある。
使用者の幸運によって発揮できる力が変わる。
刃の一部であり本来の性能を発揮することができない。
神が作りし武器であり品質は非常に高く魔力の流れや魔法を補助してくれる。
適性幸運等級:A
必要幸運等級:C』
真実の目で見てやはりと思った。
以前シークレットクエストをクリアした時に折れたラクスの剣というものを手に入れた。
それだけではただの折れた剣であるので効果を発揮せず、和輝ですら折れた剣の刃部分がなければ直せないと言われていた。
どこかで無くなっている刃が手に入るのではないかと思っていた。
ここで手に入るとはとちょっと驚く。
ただ根本から折れているラクスの剣全ての刃ではなく、折れた部分の半分ぐらいのようである。
「他のみんなは……」
手を切らないように慎重に刃をタオルで包んで荷物の中に入れておく。
物を取ると宝箱と光が消える。
そしてみんなが何を手に入れたのか見てみるとそれぞれ報酬を手にしていた。
「こ、これは……」
夜滝が手にしていたのは剣だった。
刃が真っ赤な不思議な剣で見ていると吸い込まれてしまいそうな美しさがある。
「……圭、覚えてるかい?」
「何を?」
「青龍ギルドさ」
「……あっ!」
赤い剣というところになんだか引っかかるものがあるなと思っていたら夜滝に言われて理由が分かった。
「そういえばそんな話あったね」
シークレットクエストをクリアした時中国の青龍ギルドから接触があった。
その中で赤い剣を探しているという話を相手がしていたことを夜滝は覚えていた。
『紅剣
二剣一対となる宝剣の片割れ。
かつて一振りの剣であったのだが折れてしまった時に二振りの剣に作り直された。
青剣と対を成していて二振りが揃って最大の効果を発揮する。
神剣とも呼ばれる優れた切れ味を誇り、紅剣は持っている者の筋力を大きく補助してくれる。
適性魔力等級:A
必要魔力等級:C
適性筋力等級:A
必要筋力等級:C』
真実の目で見て確信する。
この剣が噂の赤い剣である。
青剣と呼ばれる剣と対を成しているのが説明から分かる。
二本あって初めて真価が発揮されるようだけど必要な能力が二つもあるところとかを見るに一本でも強そうだ。
「どうする?」
「まあいい物そうだけど持つべき人が持った方がいいよな」
正直欲しいぐらいの武器だけど青龍ギルドがもう一本の剣を手放すとは思えない。
今から二本の剣を持った戦いを練習する気にもならないので宝の持ち腐れになるぐらいなら渡してしまった方がいい。
「そうだねぇ。これは圭に渡しておくよ」
「ありがとう」
「私が使える物じゃなくて残念だけどしょうがないからねぇ」
本音を言うと自分が使えるようなものが欲しかった。
けれど望みのものがもらえるわけではないので夜滝はサラリと諦める。
『平塚夜滝
レベル51
総合ランクD
筋力D(一般)
体力E(一般)
速度D(一般)
魔力C(神話)
幸運D(英雄)
スキル:思考加速
才能:魔道的並列思考、優れた魔力』
「でも夜滝ねぇもC級になってるよ」
「本当かい?」
レッドフォックスとも散々戦ったし、強敵であるレッドフォックスレックスも倒した。
ふと夜滝のステータスを見てみるとレベルが上がっていて総合ランクもDになっている。
つまり覚醒者等級ではC級ということになる。
「物がもらえなかったことは残念だけど強くなれたのは嬉しいねぇ」
チラリとみんなのことを見てみるとそれぞれレベルが上がっている。
最初の目的であるレベルアップはレッドフォックスレックスのおかげでいい感じになっていた。
「フェンリルにも感謝だな」
フェンリルが弱らせてくれなかったら戦いは厳しいところだった。
「納得いかない!」
「まあ怒んなって」
波瑠は順位が低かった上にもらった物が不満で怒っている。
カレンがなだめるけれど塔を出ても波瑠は拗ねていたのであった。
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