第四章
犯罪覚醒者1
覚醒者協会から封筒が届き、承認されて無事リーダビリティギルドがこの世に誕生した。
一度承認されてしまえば個人的には特にやることもない。
圭は一応リーダビリティギルドのギルドマスターとしての名刺を作ったぐらいである。
ただギルドとして多少やらねばならないことはある。
活動実績というものがある程度必要になるのだ。
名ばかりのギルドになったり、悪用されないためにいくつかの条件を満たした活動を覚醒者協会に提出せねばならない。
最初の年にしっかりした活動実績を提出すれば後は年一度ほど緩めの活動報告をするだけである。
「村雨圭さんですね? 私が塩原ギルドの塩原直樹です」
「リーダビリティギルドの村雨圭です。よろしくお願いします」
当然覚醒者ギルドの活動なのでゲートの攻略が実績となる。
資金に余裕があるのなら自分でゲートの攻略権を買うのもいいのだけど圭たちのレベルに合わせたゲートは人気で中々買うことも楽じゃない。
そのために覚醒者協会が抱えるゲートを攻略する。
覚醒者協会が抱えるゲートはモンスターがあまり稼げないものだったり遠いところにあって買い手がつかなかったようなものである。
誰かが攻略しなければならないので覚醒者協会が引き取ってこうしたことにも利用されるのである。
覚醒者協会が補助金を出して仕事のない覚醒者を集めて攻略してもらうことも時にはある。
圭もF級やE級の実力が最初からあれば覚醒者協会から回される攻略に参加していたかもしれない。
今回は覚醒者協会が持っている郊外のゲートを他のギルドと共同で攻略することになった。
他のギルドと協力することもゲート攻略の時にはあることなのでちゃんと連携を取ったり話し合いができるようなこともギルドの活動として求められる。
それに覚醒者協会が抱えるゲートを攻略するための必要な条件は少し高めに設定されていて圭たちだけでは人数が足りないことも理由だった。
圭たちと同じく活動実績を積みたい覚醒者ギルドとゲートを共に攻略する。
男性3人、女性2人のギルドでギルドマスターの塩原は二十代前半のE級覚醒者であった。
軽く自己紹介をしてどんな役割の人がいるのか確認する。
塩原は弓を使う遠距離タイプで女性の1人が魔法使い、そして残る3人が近距離タイプ。
バランスとしては良い方である。
タンクがいないパーティー編成であるが上手くヘイトを分散させれば全く問題なく戦える。
「それじゃあ入りましょうか」
悪魔教のこともあった。
なので念のため真実の目でも確認しておいたけれど能力値に怪しいところはない。
等級を誤魔化したりもしていない。
塩原ギルドの方は既に何回か攻略をしたこともあるというので圭たちは塩原に従うことにしてゲートの中に入った。
「なんだかジメッとしてるね」
「そうだな……湿度が高い感じがする」
ゲートを通り抜けた瞬間空気が変わる。
少し重たいような、湿った感じの空気だった。
雲がかかって薄暗い空、木々は黒っぽく立ち枯れている。
いるだけで不安になりそうな空間である。
「いたぞ! みんな構えろ!」
現れた魔物はF級モンスターのスケルトン。
知能がなくただ単に真っ直ぐ襲いかかってくるだけの低級モンスターである。
しかし数が多かったり斬撃が効きにくいという特徴があり、物理的な攻撃力が低いとやや苦戦することもある。
スケルトンも圭たちに気がついてワラワラと寄ってくる。
ゲートに何が出るかは事前に聞いていたので圭たちも準備をしてきていた。
カレンはいつものように盾にメイスを持っているのだけど圭と波瑠もメイスを持っていた。
スケルトンは剣やナイフなどの斬撃は効きにくいがメイスなどの打撃武器は有効打になりうる。
幸い圭たちには八重樫工房がバックに付いているので武器の変更も全く問題なく行えるのだ。
スケルトンはぼろぼろの剣を持って圭に切りかかる。
動きは遅く軽くかわして頭をメイスで殴り飛ばすとそのままバラバラに砕け散る。
それでもまだ少し動こうとするので体も殴りつけて全身砕いて倒す。
「ほい!」
色々と受験のストレスを抱えた波瑠は暴れ回っている。
圭やカレンが持つものより一回り小さいメイスで風のようにスケルトンの間を駆け抜けながら殴り倒していく。
スピードタイプの波瑠であるが筋力値も意外と高い。
F級のスケルトンぐらいであるなら全く問題なく戦えていた。
「お強いですね」
「事前に準備することができましたからね」
現れたスケルトンを倒した。
スケルトンは基本的に素材として使える部分がない。
使えるのは胸の真ん中にある魔石ぐらいでみんなでそれを回収する。
「事前にうかがっていたよりも経験がお有りのようで」
塩原は圭たちの戦いを見て感心していた。
一応夜滝も波瑠も圭の目ではE級相当であるが覚醒者協会の登録上はF級となる。
カレンについては知り合いの覚醒者でこちらもまだF級ということにしてある。
なので塩原から見れば同じ等級のモンスターをサクサク倒している人たちというように見えていた。
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