犯罪覚醒者2
基本的に覚醒者というのは同じ等級のモンスターとは一対一で倒せるかどうかぐらいと言われている。
しかし圭たちはそれぞれ強かった。
スケルトンはF級モンスターとしては弱い方ではある。
それでもやはり圭たちの動きはF級にしては良かったので塩原は今回のゲート攻略は楽に終わりそうだと安心した。
スケルトンは素材にならない。
そこが不人気の理由であるのだが裏を返せば素材として回収する必要もないということになる。
実績としてゲート攻略をしたい圭にしてみれば逆に都合がいい。
リーダビリティギルドと塩原ギルドそれぞれフォローし互いを気にしながらも、変に協力しすぎることもなくそれぞれのギルドメンバーでまとまって連携を取って戦う。
「波瑠、後ろ!」
「はい!」
「こっちだ、骨ども!」
「いくよぅ!」
4人の連携もかなり様になっている。
それぞれ視界を広く保ってお互いの動きをちゃんと把握できている。
メイスという慣れない武器であるがそれでも普通に戦えている。
それにしてもスケルトンの数が多い。
こんな風に大変なこともスケルトンのゲートが嫌われる理由なんだろうなと圭は戦いながら思った。
「そちらの皆さんは大丈夫ですか?」
「多少疲れはありますけれど大丈夫です」
ある程度戦ってスケルトンが途切れたところで一度退却した。
E級の塩原はともかく体力値が低い人は疲れたような顔をしていて、休憩が必要だということになったからだ。
ぞろぞろと襲いかかってくるスケルトンには圭も少し疲れてきていた。
塩原ギルドのF級覚醒者は疲れを隠せていない。
「つかりた……」
「ほれ、スポドリ」
「あんがと」
圭たちの中でも体力値が低めの波瑠はだいぶ疲労に襲われていた。
波瑠の場合はさらに速度値も高くて動き回ることも多いので余計に体力を使うのだ。
逆にカレンは体力値が高い。
加えて波瑠よりも動きは少なく、スケルトンの攻撃力も低いので体力の消耗は少なかった。
カレンは波瑠に事前に用意していたスポーツドリンクの入ったボトルを渡す。
ぐびぐびっと波瑠はスポーツドリンクを飲む。
これまであまり大量に現れる系のモンスターと戦い続けることはなかった。
さらには他のギルドもいるということで勝手も違う。
戦いに慣れてきたとは言ってもまだまだ経験不足であるのだ。
「大丈夫か、波瑠?」
「うん。ちょっと疲れたけどそれだけ」
「少し手の抜き方を覚えないとな」
「うぅ……」
ストレスの発散もあって調子に乗りすぎた。
それに普段から波瑠は和輝に力の調整が下手くそで抑えることを覚えたほうがいいと言われていた。
普段の単発的な戦いでは問題はないのだけど長く続く戦いでは体力の分配も大切になる。
こんなことになっては波瑠自身もそれを痛感していた。
「それにしても一緒に攻略するのが村雨さんたちでよかったです」
時間としては少し早いが休憩がてらに昼食も取ることにした。
ゲート近くに停めた車のトランクに座ってカレンが作ってくれたお弁当を食べていると塩原が話しかけてきた。
「隣どうぞ」
「ああ、すいません」
圭が少し詰めてやると塩原は隣に座る。
塩原ギルドの方はどこかのお店で作ってもらったお弁当のようである。
「最近良くない噂のあるので村雨さんたちのように信頼できそうで、強いギルドはありがたいですね」
「良くない噂ですか?」
「ええ、最近また新人狩りとかPKの連中が増えているらしいんですよ」
「そうなんですか? 覚醒者協会でも目を光らせているのに……」
同業者である覚醒者を殺してゲートでの成果や装備を奪うPK行為は覚醒者協会でも目を光らせている。
ゲートの中にまで監視の目を行き届かせることは難しいが日本の覚醒者協会は頑張っている方で最近はあまりそうした話も聞かなくなっていた。
「少し前に大きな事件があったじゃないですか」
「……悪魔教のやつですか?」
「そうです。あの影響で覚醒者協会にも大きな被害がありました。どこかに目を向ければどこかはどうしても疎かになってしまう。
人の少ない今では末端のゲート攻略まで回らないんでしょう」
「……なるほど」
黒月会が悪魔の力で無理矢理覚醒者たちを暴れさせたのであの戦いでは多くの死傷者が出てしまった。
黒月会の残党も追わねばならないし、欧州連盟にある本部の動きも警戒しなければならない。
元々人が不足気味だった覚醒者協会では全てをこなすのは難しいのである。
しかし他の覚醒者ギルドに手伝ってもらうにしても覚醒者を直接捕まえることはともかく捜査などをやってもらうことは難しい。
積極的にやってもらうほどのお金も用意できないので覚醒者協会の方で頑張るしかないのである。
その結果通常のゲートに対する監視はどうしても緩くなる。
「あとは最近金を持って入ってくる人も多い」
覚醒者が増えてゲートの攻略が進むようになると危険が減った。
さらにはゲートから採れる素材は新たな発展を生み出し経済も安定を見せてきた。
そうなると使命感に駆られて覚醒者と戦ったり、お金のためにと必死になって戦う人だけでなく最初から経済的にも余裕がある趣味のような覚醒者も増えてきた。
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