第22話 赤城クロノ:【感情交差点】オリ曲をmixしていく【ボーカルmixしてみた】

「はい、どーも赤城クロノです。ユニット企画ということで、ハクトにとってもらったボーカル音源を調整して、自作オケと合わせていくよ〜。オレの分ももうできてるよん」


 翌日。今日はクロノの個人配信である。長丁場が予想されるため、みっくんはバイトを休んでいる。


miroro「888888」

にんにん丸「仕事早い」

闇月リズの推し活チャンネル「ハクトくんの枠ROMって見てたけどオーダーなかなか鬼畜で笑った」


「リズおい来てくれたのはありがたいけどロムってんじゃねーよ。コメントどれくらいつくかも配信がオススメに出るかとかに関係するんだぞ」


miroro「そういうの言っちゃっていいの?w」

闇月リズの推し活チャンネル¥500「ごめんて笑」

八代桜¥100「コメントより再生数と同接と高評価だろ」


「あ、そうなの? 八代やしろさん教えてくれてサンキュ。ということで高評価ボタンは気軽にポチッとしてくれよな」


八代桜「は? はちだいだが」

ハクメンV「オケ聞きたい」


「了解っ! ハクメンさんリクエストありがとう」


 クロノの収益化配信で、アコースティックギターでの弾き語りバージョンは公開済みだったが、今回はまた違うアレンジになっている。


miroro「元バンドマンって聞いてたけどゴリゴリのロックサウンドねw」

ハクメンV「V系出身なんです?」

闇月リズの推し活チャンネル「ギター以外は打ち込み?」


「あ〜。順番に読むからちょっと待ってね。まずmiroroさん、そ、慧眼ならぬ慧耳だね。オレ様ロック大好き。ハクメンさん、V系も聞くけどラウドエモを名乗って活動してたよ。リズさんが言うようにギター以外は打ち込み。ギターと一応キーボードは触るけど、ちゃんと弾けるのはギターだけ。今までアコギしか配信で弾いてないけど、普通にエレキも弾ける。あ、でも、装飾に使ってる音は、自分で録音したのが多いかな。サンプリングしてリズムに使うのとかもカッコイイからやってみたいかも」


 コメントを拾いながら、作業は進んでいく。


八代桜「ラウドエモってジャンルじゃない」

闇月リズの推し活チャンネル「音楽の話ちゃんとしてるとこ初めて見たかも笑」


 さっきから八代桜って人、当たり強いなぁ。検索してみたけれど、確かにラウドロック、エモロック、という言葉は単語の記事があるけれど、ラウドエモという記事は作られておらず、造語というか、界隈の人がなんとなく使っている言葉といった印象を受ける。でもバンドマンとか音楽ライターの使用例がいくつもヒットしたし、ジャンルじゃないは言い過ぎだと思うのだけれど……。もう一回キツいこと言ったらタイムアウトにしようかな。


「オレ楽器屋行くと毎回なんかしら買っちゃうんだよね。あとそういう意味で危険なのは、だいたい千円くらいの雑貨がいっぱいある店かな。ああいう店って、知育系雑貨でトイピアノとか置いてるんだよ、あそこ。知育楽器は安いけど面白い音出るのいっぱいあるから、まあ安いしな……って買っちゃうよね。楽器だけは千円以上するんだけども。あ、案件はいつでもお待ちしてますよ〜偉い人〜」


ハクメンV「なるほどわからん」

春ポン酢「草」


「え、わからん?!」


 コメントとのやり取りを続けながら、話題はハクトの歌の話になった。流れるように飲酒してたのは、おいおいとは思ったけど、まあインスピレーションとかそういうのに必要かもしれないし……。


miroro「ハクト枠見てたけど、ハクトって生歌うまい勢なんだね」


「あ〜。miroroさんほんとよく聞いてんね。そうそう、ぶっちゃけハクトは生歌がいっちゃん上手いよ。録音とか配信だと、なんてーか、みんなの耳に届く音って限定されてんだけど、人の声って一つの音がポーンじゃなくて、揺らいだり倍音のったりしてるからもっと、こう深い音なんだよね。バーチャルとしてどうかは知らないけどリアイベやったら一発でわかるはず」


闇月リズの推し活チャンネル「説明の語彙が笑」

ハクメンV「蒼川くん声種類ありすぎてびびった」


「わかる〜。オレは声幅ない人だからそれが一番すごいと思うわ。作曲できるヤツだったら嫉妬で潰しにかかってたね。若くて才能あるヤツだいたい嫌いだし」


にんにん丸「お?てえてえ路線か?」


「いや、てえてえか? ゆーて。にんにん丸さん急に食いつくじゃん」


 ユニット企画かつ正統派な音楽系Vtuberらしい配信だからか、いつもより同時接続数が多い。すでに配信を開始して結構な時間が経っているが、枠に人が増え続けている。酒量が気にはなるけれど、画面の中のクロノはちょっとテンションが高いぐらいである。


「みんなはハクトの声どれが好き? オレはバレてると思うけど、こうロックみがあるのが好き〜。ハクトはオレと正反対のこう、澄んだ声してるけど、普通にどんな歌い方しても映えるのがだいぶズルいよな」


miroro「やっぱふだんの声が好き」

ハクメンV「低音よかった。イケボ」

八代桜「相方だからってヨイショしすぎ」


 お〜っと。これは八代桜イエローカード。確かにユニットとはいえ話題に出しすぎな部分はあったが、企画の特性上、それは仕方がない。嫌なら見るなの原則を守れないなら、コメントできなくしてやりませう。……なんて呑気にしていたら、


「あ?」


 先にクロノの方がブチ切れてしまった。


「おい、八代はちだい。こっちがスルーしてやってっからって調子のるなよ。何がヨイショだ、ちょっと褒めたぐらいで媚びてるだのヨイショだの言うやつって今までどんな人生送ってたんだろうね。褒められたことないのかな?」


八代桜「読んでんなら反応返せよ。金払わないと反応しないシステム?」


「ちげーよ、お前のクソコメなんて万積まれても消すわボケ。そりゃ、収益化した以上、こっちもお金払って投げてもらったコメントを、むげにしたいわけじゃなえよ? でも投げたら読まれるなんて言った覚えはないし、コメントはあくまでコメントなんだわ」


 いきなりリスナーとの喧嘩が始まってしまったわけだが。ど、どうしよう。胃が、千切れそうに痛い……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る