第3話 さようなら、日常


半年が経ち、順調に学校生活を送っていたら中学3年生になっていたのかなと静かな病室で一人思った。

病気の進行がかなり進んでいて、今すぐにも移植をしなければならないのだが、ドナーが見つからないということを母から聞いた。

母はいつも笑顔だった。その笑顔がどんな不安も取っ払ってくれる気がしていた。

思えば、僕が幼馴染を好きになったのも彼女の笑顔だった。

どんなときも側にいてくれてその笑顔で僕を照らし続けてくれた。

それだけで僕にとっては十分すぎる希望だった。

あくる日、2週間ぶり幼馴染が僕の病室に遊びに来た。

「やっほー笑、体調よくなったー?」

「うん、大分よくなったよ」

噓だ。何一つとして自分一人でできることなどなにもないというのに彼女を前にすると無意味な強がりをしてしまう。

彼女との関係が少しでも崩れることを恐れて僕は真実を話すことができなかった。

それから数週間、平穏な日々が続いた。

ただ、この平穏な日常が僕にとっての余生だったのかもしれない。

9月25日

容態が急変した。意識が今世にあるのかも不透明だった。

9月28日

朦朧した意識の中でストレッチャーに乗って手術室にむかっているのが見えた。

その後のことはわからないが次に目を覚ましたのは真っ白に光る階段の前だった。

そこは天国に限りなく似ていた。

僕は何が何でも受け入れなければいけなかった。

自分は死んだのだということを。

今思えば、幸せな人生だったのかもしれない。

愛情を受けて生まれ、育ち、好きな人ができて、楽しい時間を過ごせた。

これだけで僕の人生には意味があった。

ありがとう、お父さん、お母さん、僕に温もりをくれて。

とうとう幼馴染には好きって言えなかったな。

でも、これだけは言わせてもらいたいな

僕に生きる希望を与えてくれてありがとう、天国から君を見守っているよ。

最後に、、、、好きだよ。




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