3ー15【皇女のプライド2】



◇皇女のプライド2◇ミオ視点


 俺の全てを利用し、大陸最大の国土を誇る【サディオーラス帝国】の内乱を終わらせる。それが、皇女セリスの考える作戦だ。

 【アルテア】に駐在する三万……いや今はかなり増えているから、五万の戦力と想定しておくとして。

 【アルテア】にいる限り、俺の力も立場も全て理解している人たちだ。

 そんな人たちの士気をあげるのに、俺との婚約はうってつけになる。


「攻め込むのに、俺の【転移てんい】を使うつもりなんだな?」


 パチン――と指が鳴る。


「その通りよ。でもって……その【転移てんい】の力を、技術転用させて欲しいの」


「――な」


 おいおい……まさか。

 俺の内心の驚きを他所に、セリスはハキハキと続ける。


「ミオは【創作そうさく】で物体を作り出せる。そして、その物体に様々な力を反映させられる……【極光きょっこう】のランプとかね」


 するどいな、セリス。

 流石は日本人……あーいや、セリスの生まれた時代はかなり昔だし、ファンタジーとかSFの知識はないんだろう。

 だけど……【転移てんい】の力を技術転用か……マジかよ、この女。


「言いたいことは分かった。【転移てんい】の力……つまり、ポータルを作ろうってんだろ?」


 これは、近い将来で俺もやろうと思っていた事だ。

 まさかセリスから提案されるとは思わなかったけどな。


「ぽ、ポータル。そうポータルよ……テレポーテーションのやつね!?」


 知らないだろポータルの使い方。

 テレポーターとかも言う。


 ポータルはフランス語だったかな、入口って意味だったか。

 テレポーテーション装置、その入口を作るって言ってるんだ、セリスは。


「そうそう、テレポーテーションな。【アルテア】にいる帝国の兵力をどうやって短期決戦に使うと思ったが……おいおい、俺にどんだけ仕事させるつもりなんだよ……」


 セリスは、【アルテア】にいる五万の戦力を、ポータルを使って一気に帝都へ流れさせるつもりなんだ。知識もないのによく思いつくよ……凄いね日本人の精神は。


「簡単でしょ?だって……この前【アーゼルの都】に行った時に行ってるものね、帝都へ」


 そうだな。ユキナリの無事も確認してきたよ。


「俺に先に帝都へ行って、転移装置を作れって言いたいんだろ?」


 再びパチン――と。


「流石ね、もう全部正解だわ」


 今度はふわりと、デスクから飛び降りる。

 いや……前!!せめて隠してお願いだから!!


「……まだ全然、完成できる気がしてないんだぞ?」


「出来るだけ急いで。なるべく早く」


 なるはやを所望か。


「しかし五万人を【転移てんい】可能な装置か……」


 凄い難しそうなんだが。

 無理難題を、余裕で言いつけてくるよなセリスは。


「五万?何を言ってるのミオ」


「はい?」


 首をかしげるセリス。


「帝国の戦力は、この【アルテア】全土……全戦力で潰しに行くわよ?」


「え……」


 巻き込みは、どうやら俺だけじゃなかったらしい。

 前に考えが似てるって言ったの、前言撤回してもいいか?

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