3ー14【皇女のプライド1】
◇皇女のプライド1◇ミオ視点
セリスは反逆するんだ。
だから伴侶が必要になる。それは未来で夫になる……セリスが帝にならない場合の、次の皇帝となる男。
「セリス、お前は……俺を皇帝にしたいのか?」
「ええ、ミオならやれると思うわよ?」
それは違うよ。
帝国の指導者は、絶対にセリスでないと駄目だ。
「無理だね。俺にはこの【アルテア】だけで充分だ」
俺のその言葉に、セリスはニッと笑い。
「へぇ……じゃあ、帝国の全土――【アルテア】にあげるわ」
「!!」
その不敵な笑みは、まるで始めから……そうか、そうかよ!
「お前……始めから狙ってたな?」
「さぁ、どうかしら?」
国盗りゲームを仕掛けようとしているのは分かった。
皇帝を相手取り、少ない戦力で挑もうとしている……帝国が、俺たちの向かう未来に存在する為に。
セリスは救おうと言うんだ、このまま見殺しになる可能性のある、帝国の多くの命を。
「皇帝を倒して、次の皇帝を据える……そうして【アルテア】へ帰属させる。そうすれば、多くの一般人たちの命は助かるからな」
「……そうね」
「その役目をセリスが担おうとした。皇女だし、最適解だからな……だけど、俺との関係が進展していれば別だ」
関係の進展……つまり婚約者。
次代の皇帝となる男……すなわち現在の俺が立たされている場所だ。
俺と結婚し、俺が皇帝となれば、皇女の立場から皇后となる。
「帝国の民は、次の皇帝を……もちろん強者を望んでいるだろうさ。現皇帝は実力者だって噂は、当然俺も知ってるからな」
しかも自分からは動かない。
反撃に適し、やられたらやり返すをモットーにしているタイプの男。
そんな男が、自分から動いた訳で……そりゃあ国民は不安だろう。
どこまでの戦いになるのか、しかも……父娘で。
「父上は本気よ。本気で攻め込もうとしているわ……この【アルテア】に」
「分かってる。だけど――」
俺とセリスは同時に口にする。
「「そうはさせない」」
やっぱり、俺とセリスの考えは一致している。
この早急な展開、無理矢理で強引な作戦にも思えるセリスの手札。
これは全部、早期決戦を睨んだものだ。
「……ふふっ。この【アルテア】は、絶対に攻め込ませなんかしないわ」
「ああ。当たり前だ」
同じ考えだった事が嬉しかったのか、セリスはデスクにそのまま腰を下ろす。
おい、生尻のまま俺のデスクに座るんじゃあない。
「私は、帝都……【カリオンデルサ】へ攻め込むつもりよ。それも、超短期決戦を仕掛けるわ」
「やっぱりか……」
だからこそ、この用意周到の真逆。
急な婚約は士気向上の為、俺が相手なのは……まさしく俺を担ぐ為。
「ええ、力を貸して貰うわ。私が父上を倒す為に……帝国の全ての民を救う為に」
セリスは、俺の全てを利用するつもりなんだ。
俺の持つ【アルテア】の権力も、俺の能力も、俺の仲間も……全部。
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