3ー12【かの姫は思う4】



◇かの姫は思う4◇ミオ視点


 ま、丸見えだ。下着が透けるとかチラリズムとかじゃない、全部丸見え。

 皇女の大切な場所が、全部見えてしまった。

 動くし見せてくるしで、上も下も全部……全部だ!!


「い、いい加減にしろって!どんなお遊びだよっ」


 俺は手を払う。勿論セリスに当たらないように。


「わっ、と!別に遊んでないけどね……私は」


「どこがだ!勝手にあんな宣言までしておいて……俺はミーティアにすら説明してないんだぞ!?」


 あまりにも突然だった事もあったが、誰一人として説明していない。

 恋人であるミーティアにも、スクルーズ家の家族にも……幼馴染二人にも、女神にも、誰にもだ。


「悪いと思ってるわ。でも、取り下げはしない」


 本当は悪いとも思ってないんだろう。

 それは俺も承知の上だ。問題ない。


「それは分かってるんだよ!この先、皇帝派との戦いを備えれば、今、セリスの軍の士気を下げる真似はしない!つーか身体を隠せぇぇぇぇ!!」


 堂々と裸体を見せる皇女。

 エプロンの隙間から見える薄桃色の突起が、チラチラと見えて毒だ。

 いや、見えてるだけで、見てる訳じゃない。絶対だ……絶対だぞ!?


「なら、着せてくれれば良いわ。お姫様は自分で服を着ない!」


 両手を広げてバッチコイ、じゃねーんだよ!

 せめて顔を赤らめるくらいしろや!!


「着ろよ服くらい自分で!どうしたお前!この前からおかしいぞ!もっと冷静な判断できたろ!?知能指数落ちたのか!?」


 【アーゼルの都】から帰って来てからのセリスのムーブは、全て帝国の為だと言うのは理解できるし、協力してやれる事なら喜んで手を差し伸べるさ。

 今回の結婚がどうのだって、皇帝派との決着がつけば誤解は解くつもりでいるが、それでも心を痛めて、被害を受けている人間は少なからずいるんだ。


「あら?どうして怒っているの?私は、ただ貴方に……」


 本気の戸惑いを見せて。


「だから!!それは演技だろ!?結婚とか婚約とか、軽々しく言える存在じゃない事くらい、自覚してるだろアンタは!」


 裸エプロンのセリスに、俺は普段使いのコートを羽織らせる。

 その端をギュッと掴み、セリスは口を開く。

 ゆっくりと、確かな言葉で、俺の視線を受けながら。


「……私が、本気だって言ったら……ミオはどうする?」


「なっ……はぁっ?」


 頬から汗が流れた。

 冗談……には見えなかった、悲しげな視線、物憂げな空気。

 自分の身体さえ差し出す勢いの彼女の意志に、これ以上の追求は、難しいのではないかと。


「私は本気よ、ミオ・スクルーズ殿……帝国の為、民草の為……私、帝国皇女セリスフィア・オル・ポルキオン・サディオーラスは……貴殿に、結婚を申し込むわ。そう――何度でも、叶うまで」


「……っ」


 どうしてここまでさせる。

 何がセリスを駆り立てる。

 国が大切なのは誇らしい事だ、尊敬に値するよ。

 だけど、問題が……禍根が残りすぎるんだよ……セリスのやり方は。

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