3ー10【かの姫は思う2】
◇かの姫は思う2◇ロイド視点
どうしてこの方は、いつも突飛な発言と行動を繰り返すのだろうか。
少しは部下の心労を案じるなどという思慮を、しては下さらないのか。
今日もそうだ。今朝から台所作業をし、下手な料理をして指を切り、火傷をし、足に鍋を落として怪我をしている。
「ロイド、いいわね?」
「……はい」
返事だけはしておく。
昼休みを終え、私はセリスフィア殿下と共に【アセンシオンタワー】へ
「本当にいいわね!?絶対に口出しは無用よ!?失敗しても笑うのなし!」
私の視線の下に入り込み、指差し確認をしながら言う。
いいのですか殿下。ここはもう入口、彼なら聞き取りますよ。
「承知していますが、なぜ弁当なのです?」
しかも昼食の時間はとっくに終わっている。
厳密に言えば、殿下の調理に時間がかかりすぎて、間に合わなかったのだが。
「結婚と言えば愛妻弁当でしょ!」
「……」
(なんと安直な)
「今安直とか思ったわね?」
「いえ」
確かにミオ・スクルーズが、私たち帝国の転生者を含む、多くの転生者の中でも優れている事は、誰もが周知している事実だ。
しかし、まさか結婚をすると言い出すとは……突飛な行動が多いとは言え、度肝を抜かれた。
「ならよし、ロイドは扉の前で待機。誰かが来たら【
「了解ですが……最近は誰もミオに近寄って来てはいないでしょう、誰かのせいで」
「と、棘があるわね……良いけど、自覚もあるし」
視線を逸し、殿下は申し訳無さそうに。
「私は、帝国の為なら何でもするわ。父上がアリベルディ・ライグザールやダンドルフ・クロスヴァーデンと繋がり、協力をしているというのなら……私はそれを止めなくてはならない……だから」
「だからミオとの婚約ですか」
確かに殿下直属である三万の部下たちの士気は上がっている。
この噂を聞きつけて、【アルテア】の参加したいと言う帝国の民も多くなってきている。だが、それでも皇帝との差は八倍以上だ。
更に比例して、女王国と公国との溝が目立っている気がしてならない。
「……ええ。意地でも結婚するから……例え友人に恨まれようとも、性悪女の汚名を着ようとも」
「……承知しています」
その意思だけは、誰にも覆すことは出来ない。
殿下……彼女は頑固だ。父親である皇帝陛下に見切られ、皇女という立場さえ危うくなっているというのに、その意志を加速させ、国の為、民の為に尽力を傾ける。
その為なら、せっかく出来た友人との関係さえ……壊れる覚悟で。
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