2ー52【自分を顧みて6】
◇自分を
西大陸の魔物、【
その成分が、帝国が使用した銃の弾丸から検出……いや、鑑定された。
魔力に作用する寄生虫のような存在に、ゼクスさんの魔力はかき乱されていたようだ。
「ほれ、こいつを飲ませてやれ」
「え……っと、これは?」
パメラさんが話をしている最中に、爺さん先生が取ってきたらしい紙袋。
飲ませてやれって事は、薬か。
「漢方に近いが、まあ薬だ……くそ不味いがな。嬢ちゃんの無くなった味覚でさえ、感覚だけで顔を歪める程だからな」
「え」
先生はレフィル・ブリストラーダを見た。
話を振られると思っていなかったのか、聖女は顔を青くして俺を見た。
「……味覚、ないのか」
「……」
まぁ理解できる。俺との戦いの後遺症……だろうな。
「味覚だけじゃねぇ、痛覚も、睡眠欲や食欲も、五感は半数、欲は全部消失してらぁな?残っている感覚も、相当鈍ってるぞ。特に痛覚か、内部っつーか、心か。そこだけ痛みを感じるようだが、外傷はまったく感じないようだ」
五感の半数、味覚に痛覚、触覚、嗅覚、視覚。
俺の事を見えているし聞こえているから、痛覚、味覚、嗅覚がないのか。
でもって、痛覚だけは非常に鈍い感じ……なのか。
欲ってのは、三大欲求の事だろうか。
「そうなのか?」
「……ぇぇ」
声ちっさ!!
いやまぁそうだろうけどさ、俺だって積極的に関わりたくはないけど!
でも……食事も睡眠も、性欲は……置いといて。
けれど……じゃあ、お前。
そうか、こんなに近くに来ても
「……こ、これは、アタシの罰……だから。貴方たちに、村に、王国の人たちに……して来た、罪の」
レフィル・ブリストラーダ自身、数年前のあの愚行を恥じている。
そう感じた。それなのに、外のあいつと来たら……
「……あの時の屈辱、今も忘れはしないよ」
「――っ」
怯えた。でもやめないぞ。
本当に駄目だったら、きっと医者の爺さんが止めるさ。
「聖女、レフィル・ブリストラーダ……俺はあんたに同情もしないし、許してやるつもりもない。やった事は事実だし、苦しんだ人が大勢いるのも変わらない」
「……ぇぇ、分かって……るわ」
だけど。
「でもな、それがあったから、今の俺があると……そうも思ってるのが、悔しい所なんだよなぁ」
急な落差と思っただろう。
俺は腑抜けた声を出して、レフィルが座る椅子の前でしゃがむ。
丁度レフィルの顔を見上げる形で。
「……ぇ、え?」
「ここに来て、今話を聞いて、あんたが自分の過去を
確かに故郷を失った人もいる、俺もその一人さ。
でも、それだけじゃない。
「あの時以上に、村の人達たちは元気だ。それに活気にも満ちてる。何より、人が増えて毎日が楽しいんだよ……小さかったあの農村が、今じゃこの都よりもデカいんだぜ?しかも三つの国が協力してるんだ、未来が楽しみでしょうがないんだよ!」
「……み、らい?」
「ああそうさ!俺にもあんたにもある……未来だ」
この希薄な存在感は、レフィル・ブリストラーダの命そのものだ。
今ならよく分かる、消えかかっていたアイズ……それと同じだ。
だったら、助ける事だって――出来るさ。
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