2ー51【自分を顧みて5】



◇自分をかえりみて5◇ミオ視点


 魔法で見た。それはなんてことのない言葉なんだろう、異世界なんだしよく聞く……ではないんだ、この世界に限っては。


「……もしかして、鑑定魔法ですか?」


「おおそうだ。知ってたか……ウチの嫁さんがその魔法を使えるからな。しかも内包された物を見る、限定的な魔法だ。でもって武器とか防具は鑑定できねぇぞ」


「あらやだ〜、そんな事まで言わなくてもいいのに〜!うふふふふ」


 助手でもあるのだろう婆さんは、爺さん先生の背中をバシバシ叩きながらウフフ笑い。痛そうだけど大丈夫か。


「いえ……それでも凄いです。俺には分かりませんでしたから」


 俺も、鑑定魔法の真似事は出来る。

 対象の魔力を周波数的に観測し、整えて合致させる……そんな荒業だ。

 しかも知識がないと意味がないからな。


「当然だ。儂の嫁だぞ」


 仲良いんだろうな、この老夫婦。

 俺もいつかミーティアと、こんな爺さん婆さんになりてぇよ。


「それで、鑑定の結果は……?」


「急かすな坊主。パメラ」


「はいはい。これを、どうぞ」


 爺さん先生が説明する訳では無いのか。

 奥さんであるパメラさんが、とても小さな瓶を俺の目の前に置いた。


「……なんすか、これ」


 小瓶の中には、何かがうごめいていた。

 ウネウネと、不規則に。


「ふん。知らねぇのも無理はねぇ、こいつは――」


 爺さん先生がドヤ顔で披露しようとしたのだろうが、さえぎるように。


「これはね、西の大陸の【魔蟲まちゅう】よ」


「……【魔蟲まちゅう】?」


 初耳だ。しかも西大陸か……俺たちのいるこの場所は東大陸で、南が【ラウ大陸】だったな。


「そう、【魔蟲まちゅう】。西の大陸の多くの魔物は、こう呼ばれているわね」


 西大陸の魔物は、こんな気持ちの悪い魔物ばかりなのかよ。


「でもなんで、この【魔蟲まちゅう】?ってのが、その弾丸と関係があるんすか?」


「こいつはな、言わば微生物だ」


 び、微生物!?それにしてはデカい、デカすぎるって。


「微生物ですか……寄生虫ならまだしも」


「お、良いとこつくじゃねぇか、坊主ぅ!」


 急にテンション上げるじゃん、爺さん先生。

 こっちはまだ理解も追いついてないのに。


「この弾になぁ、分解されたこいつ……【魔蟲まちゅう】の成分が含まれてんのさ」


 爺さん先生は球を転がし、小瓶に当たる。

 コツン……と鳴った瞬間、まるで同胞を救うが如く、瓶の中の【魔蟲まちゅう】が動いた。


「この虫の成分が……弾丸から??」


「言葉通り、【魔蟲まちゅう】……魔法の虫だからねぇ。患者様の不調の原因は……間違いなくこの【魔蟲まちゅう】だわねぇ」


 こんな小さな虫が、ゼクスさんの不調の原因だったなんて。

 でも、あの魔力酔いは相当酷いものだった。【転移てんい】で魔力を俺が肩代わりしているにも関わらず、人の魔力で酔うんだからな。

 常に【魔力超過使用オーバードマジック】の状態……そんな感じだったし。

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