2ー47【自分を顧みて1】
◇自分を
元・騎士の男の横を通り過ぎると、アレックスが分かりやすい程に苦々しい顔をした。だったら命令とかしないで、自分でかかってこいよ。
「失礼する」
コンコンとノックをする。
フレイも、三人の様子を見ながら俺の隣に来た。
スゲェ顔している。あーあ、呆れてるなぁ。
ドアを開けると、背の低い爺さんと婆さんが出迎えてくれた。
奥には……うん、感じるな、あの女の気配だ。
でも、俺にはもう関わるつもりはない。
「ここが診療所だと聞き及び、訪問させていただきました。外で騒がせてしまい申し訳ない」
「あら、案外怖い人では無かったわねぇ」
「患者は?」
二人の老人、医者は爺さんの方だな。
俺をいきなり敵と見るかとも思ったが、良い医者のようだ。
「動けず、近くの宿に寝ています」
「症状は?」
淡々と問診する爺さん。
素直に答えとこう。
「魔力による吐き気や目眩、歩行障害もあります。本人は平気と強がりますが、睡眠不足や食欲不振、それから精神的にもキテいるように感じました」
「ほう……外傷は?」
銃をどう例えるか。
「えと……背部を鉛玉で攻撃され、体内に到達する穴を開けました。弾は取り除き治療しましたが、それからですね、症状が出始めたのは」
「キュアはしっかり治したのに……」
こら、余計な事を言わない!
「鉛玉だぁ?矢ではなくか?」
「一応その弾は残ってますけど」
「見せろ。そうだな、こっちに来い」
おぉう、結構グイグイくるなこの爺さん。
「失礼します」
「はいはい、こちらですよ〜」
室内を案内される。
奥へ行っても、いいんだよな?
聖女がいるんだろうけど、この老夫婦は守ってる訳ではないのか。
「……」
視界に映った。
気まずそうに視線を逸らす、ヴェールを纏った女性。
小刻みに震えているのは、俺への恐怖だろうか、それとも怒りか。
部屋の隅っこで、これでもかと小さくなってる。
こういう時の為の騎士じゃないのかよ、あいつら。
「これに置け」
カチャンと台に置かれる、銀のトレー。
よく病院で見るやつだ。小屋はオンボロだけど、医療器具はしっかりしている……やっぱり良い医者なんだ。
「はい。これです、この小さな弾……超高速でこれを火薬で打ち出し、矢よりも魔法よりも速く、鎧や兜も安々と貫通する威力を持ち」
「……銃」
ボソリと、聖女……レフィル・ブリストラーダが口にした。
「――嬢ちゃん、知ってんのか?その武器を」
「……え、あ……ぁ、その……」
一度こちらを見て、俺と一瞬だけ視線を交じ合わせると、あたふたとし始める。
これは凄い落差だ。全然別人じゃないか、まるで子供だ。
もしかしてずっとこんな状態だったのか?数年?
というか、あの頭の大怪我でよく生きていたと思うよ。
【
「構わねぇよ。知ってることなら爺さん先生に教えてやってくれ……俺は、外に出てる」
俺は自分で話す効率よりも、この女に話させる事を選んだ。
敵意は無いと言う理由にもなるし、なにより……あんな悪女のような女が、どう変わったのか、気にもなったからな。
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