1ー37【反撃の口火4】



◇反撃の口火4◇


 帝国東部……とは言っても時差がある程に広い帝国だ。

 正確には場所を言えば、【アルテア】から西に多少進んだ位置に存在。

 【サディオーラス帝国】の中で言えば、まだ中央部にも届かない場所に、その鉱山跡はあった。


「――さてと、ここでいいかな。な?」


 俺が誰かに問いかけるのは……一人じゃないからだ。

 俺に着いてきた人物、それはオレンジ色の髪をした俺の幼馴染、アイシア・ロクッサだった。

 今や彼女は神の一人。この世界に初めて誕生した、正真正銘、天然の女神様だ。


「……うん、良いと思う。ごめんね、着いてきて」


 アイシアは俺に遠慮していたが、声を掛けたそうにしている所を俺が発見。

 どうしようか迷ったが、人手も必要だったし俺から頼んだ。


「いや、いいさ。一人で来るより全然いいし……それに、やっぱり一人は寂しいしな」


「そんなこと言って、駄目だよミオ。そんな言葉ばっかり使ってるから、無意識に女の子をたぶらかすみたいになるんだからね?」


「え」


 そ、そんなつもりはないんだが!?

 え?俺、無意識にそんな事をしてたの!?

 そんなナンパ男みたいなセリフ吐いてた??


「あたしだからいいけどね。あとクラウさんも平気か……イリアとかセリスは駄目よ?本気にするから」


「しないって、やめてくれよアイシア……」


 戸惑いしかないアイシアの言葉に、俺は本気で困った。

 イリアは仲の良い女友達、セリスは国営を教えてくれる先生であり、大切な協力者だ。しかも皇女様。まぁ友人ではあるけど。


「どうだか。案外天然なのよね、ミオって」


 そうかなぁ。


「そんなこと言われてもなぁ……」


 後頭部を掻きながら、困惑しつつも準備をする。

 鉱山跡は十二年前に閉鎖されていて、中は勿論暗い。


「ん、それが……?」


 アイシアが、準備をする俺の手元を覗き込んでくる。

 俺の手には、筒のような物が握られていた。


「そ、これが【極光きょっこう】の光を形にした……う〜ん、まぁライトかな」


 懐中電灯のような役割を持つ、魔力を注いで光を点灯させる代物。

 俺が【創作そうさく】で創った。


「ライトか……良いものよね、普段はランタンとか松明たいまつだから」


 電球よりも先に出来てしまったが、いいよな別に。


「これも【コメット商会】で売り出すからな。冒険者には必需品になるはずだ……魔力消費は抑えられるし、松明たいまつやランタンと違って場所も取らないから」


 カチッとスイッチを押すと、パァァァ――と光源が広がる。


「すっごい光ね、ちょ、ちょっとまぶしすぎない?」


 手で目を隠しながら。


「……だな。調整しないと、明るすぎて駄目か」


 商品にする前に、要調整。

 明る過ぎては、ある意味不良品だ。

 時と場所を選べば良品だが、冒険者向けだと……魔物に見つかったり、ライバルとの競合クエストに失敗するかも知れないからな。


「こんなもんかな。どうアイシア」


「うん、いい感じだね」


 ニッコリと笑う。

 でも、久し振りだな……アイシアとこういう風に二人になるの。


「……じゃあ、行こうか。鉱山探索」


「うん!楽しみだなぁ」


 そ、そうか。

 楽しめる要素あるかね……ただの材料集めだけど。




 【オーロライト】で狭い鉱山内を照らす。

 ん?名前は今決めたけど。ダサい?そんなこと知っている、だがもう遅いんだよ。


ひどい崩れようね。落盤とか、大丈夫かなぁ?」


「大丈夫。【無限永劫むげん】で強固にしておくよ」


 この現状のままに、【無限永劫むげん】で地盤だけを固める。

 古い鉱山跡だ、崩落したら一溜まりもないだろう。


「そ、そういう意味じゃないんだけどなぁ……もう」


 何かに落胆しているらしいアイシア。

 しかし俺には検討もつかない。


「……ん?」


「なぁんでもない。ほら、行くよ!」


 え、怒った?

 ズンズンと進んでいこうとするアイシア、大股で。


「あ!ちょっとアイシア……地盤が平気だからって先行するなよ!」


 それでも不安なら【代案される天運オルタナティブ・フォーチュン】で未来てくれよ。そうしたら【無限永劫むげん】を使わなくても。

 いや……そうじゃないのか?


 だけど、アイシアがどうして着いてきたのかも知らないし、何故か探索を楽しみにしているし、わざわざミーティアに「一緒に行ってもいい?」と、断りまで入れてるしで……もう何がなんだか。

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