1ー36【反撃の口火3】



◇反撃の口火3◇


「ふぁ……ぅあぁぁ〜〜〜あっ」


 交渉を終えて、俺は部屋に戻る。流石に眠いっての。

 大きな欠伸あくびをしながら、ソファーでグダる。

 目の前のテーブルには、ミーティアから貰った(借りた)結晶が数箱分。


「さてと、この結晶の形状は……単純にマイクロチップでいいだろ。組み込むんだし」


 能力――【哀傷あいしょう】の代償で涙が出せなくなった俺は、定期的に目薬をさしている。かわくからね……そういうのは痛いんだよ。

 欠伸あくびをしても涙出ないから。


「【無限永劫むげん】っ……と」


 試しに全てを極小のチップに変える。

 まだ紋章を刻んでいないから、効果は何も無い。

 これは試作だからな。


「このチップ状の結晶を、基盤となる装置に組み込んで」


 それと、【Aキューブ】だ。

 あれは覚醒をうながすアイテム。

 それも同時に組み込みたい。


「この異世界で、こんな携帯端末・・・・だなんて物を創るとは思わなかったな」


 通話が可能なチップ。能力獲得を促すシステム。


 そうさ……俺が創るのは、通信可能の成長端末。

 RPGゲームなんかであるような、そんなシステムを盛り込んだデバイスだ。


「出来れば頑丈に、防犯性も優れた物を創りたいが……」


 なにせ戦闘中も所持していないと駄目だからな。

 この結晶に【Aキューブ】、それから……魔法なんかも組み込めれば最強だ。

 これ一台で、成長も出来て魔法も使える。


 装備の現出は……流石に原理が違うか。

 転生者が使用する転生の特典ギフトの武器なんかが分かりやすいが、魔力に変換とか出来ればいける……か?


「銃を創ることも考えたけど。、それだと二番煎じ……【コメット商会】がパクったとも言われかねないからな。だから対抗策には、他の物が必要だ」


 それがこれ。

 通信結晶と【Aキューブ】を組み合わせた携帯端末。

 他にも自身の成長を手助けするシステムと、魔力によって発動できる魔法を組み込みたい。


 【Aキューブ】のようなアイテムを創れば可能だ。

 スマホのような物は創れないだろうが、似た物……名前はどうしようか。


「後世に残る、未来で活躍する道具としての位置付けとするなら……」


 テーブルに置く変質した結晶クリスタル。これを【Cコミュニケーションチップ】と呼ぶとしよう。

 能力覚醒をうながす【Aアウェイクニングキューブ】に、魔法を使えるようになる何かと、身体能力の成長を可能にするシステムの二つをなんとかすれば……きっと最強の端末が【創作そうさく】可能なはずだ。


「問題は、それ単体を【創作そうさく】で創る事が出来ないって事だ」


 一括で【創作そうさく】出来れば一瞬なんだけどなぁ。

 そしてそれを【複写ふくしゃ】して大量生産。

 今の俺なら簡単だと思いきや、それが意外と難しい……何故なら、俺に知識がないからだ。


 空想・想像の物なら、【Aキューブ】のようにイメージで創り出せる。

 しかしこれは組み合わせだ。それが難しい……【創作そうさく】は無から何かを生み出す能力であり、【無限永劫むげん】だってパーツの操作になる。

 個別で【無限永劫むげん】を発動し、組み合わせることは可能だが……それを大量生産は苦労が多い。


「……俺一人の為だけなら、それで済むんだけどな」


 もしくは少数限定。

 【ユニバース】のメンバーにだけなら、試作で創ってみても良いかもだな……


「よし、さっそく材料を探そう」


 この世界の材料で創らねばならないので、【創作そうさく】は禁止。

 オーバーテクノロジーは駄目だ。あくまでこの世界で可能な範囲でやろう。




 俺は軽く昼食を取り、【転移てんい】で【アルテア】の外へ。

 本体の材料を確保しておきたい。


「どっかにいい採掘場ないか……」


 木材だと当たり前に駄目だし、薄く加工出来る金属とかがいいな。


「あ!確かセリスが前、帝国の東の方に……」


 思い出すのは昨年の事。

 何度も帝都に呼ばれている俺が、セリスに頼まれて帝国東部へ遠出した時。

 なんだかんだで、結構帝都まで近付いたんだよな……結局、【帝都カリオンデルサ】へは行ってないんだけどな。

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