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何故、それを思い出したのかというと――
大雪が、わたしを都心に閉じ込めたからだ。
クリスマスの2日後だった。サンタクロースのようにあわてんぼうと言うよりお間抜けな雪は、聖夜に間に合わず今更どっさり降った。
すっかりクイズ研究部を引退していたわたしは、その日、受験勉強の息抜きに声優のライブを観るため、都内へ出てきていたのだけれど――
埼玉へ向かう電車が嘘のように死に絶えて、わたしは大雪の下、家に帰れなくなった。
「……」
賢しらぶったところで、わたしは高校生だ――クレジットカードは持っておらず、財布には2万円しか入れてこなかったし、こんなことになるとは思わないから、物販でほとんど使い果たしていた。
白く白く染まった中野サンプラザ前の広場を、わたしは呆然と見ている。
力なき十代にしてはそれなりに頭が回る方だと自負していたのが恥ずかしくなるほど、この大いなる力の前で、わたしは無力だった。
後にわたしは、回想する――大学生のわたしだったら、自然に、カラオケやネットカフェで一夜を明かすということを視野に入れて考えられただろう。今だったら、家族に頼んでキャッシュレス決済アプリに送金してもらうという手も使えたはずだ。
ただ、その時のわたしには、どうしても他の手段が見つからなかった。それなりに悪くない家庭環境で育ったので、きちんとした宿泊施設でもないところに未成年の女子がひとりで泊まるのはとても怖いことだと、潔癖に近いイメージを持っていたし。
だから――助けを求められる都内在住の知り合いを一覧から見つけようとして、見つけようとして、見つけようとして、たっぷり三十分は悩んでから、わたしは語堂に初めてのメッセージを送ったのだ。
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