第6話 竜人疑惑 視点ジグ

鈴木冷夏と名乗った少女は、魔力の消耗があったのか再び寝息を立てている。

祖父から身につけろと言われて学んだ僅かな知識ではあの腕輪の文字はリザードマン語だった気がする。


少女の裸を見たデグに、どこかに鱗が生えていたりしなかったか?と、尋ねたがデグは首を振って否定した。

竜人族ならば、頭に角があったり、体に鱗があったりするときいている。

青い血液の魔族ならあの肌色にはならない。


「兄者。冷夏村の鈴木でなく、鈴木冷夏と言っ  た。お貴族様だ。」


「たしかリザードマン語では家の名前が先にくる。たしかに平民ではないだろう。」


少女が持っている黒い板。

何か光を発したりもしていたし、微かに音もしていたが、何かの魔導具だろうか?。

着ていた衣服も、このあたりの物ではない。

もし、少女の言う様に転移魔法の失敗なら?

それならば、本来の行き先に送り届ければ謝礼ぐらい貰えるかもしれない。


「兄者。リザードマン語喋る聖女の話、昔、親父に聞いた。」

確か、そんな話もあった。

異世界から舞い降りた少女が文字無きリザードマンに文字と知識を与え、ハイリザードマンと結ばれ竜人族の祖となった話。


それまでは、辺境の島のさらに片隅に暮らしていたリザードマンが島を統一し、魔王の同盟国となる原動力となったリザードマンの聖女。

聖女が伝えたリザードマンの刀は剣とはまったく切れ味が違うという。

先の魔王戦争では聖王国の隊が待ち伏せしていたリザードマンの抜刀隊に敗れた話もあった。


ただ、この少女が転生者だとしたら、聖神教に差し出さねば村が危うくなる。

魔術師なら魔術師ギルドに引き渡す。


それより前に村長の叔父になんと話そうか?

色々考えこんでいるあいだに、いつの間にか、イビキを立て始めた弟を見て溜息が出た。

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