第3話 聖女さま 視点デグ
その時、大地母神の泉に祈りを捧げていた。
亡くなった祖父が建てた大地母神のシンボルが泉の側に佇んでいる。
兄者と自分は近日、冒険者となって旅に出る予定だ。
兄者が言うには、叔父に村を追い出されるらしいのだが、自分には良く分からない。
肩身の狭い村にいるよりは気分が良いと思うのだが、兄者は村に未練があるらしい。
冒険者になる不安は、これと言ってない。
考える事は苦手だが、兄者が居てくれれば替わりに考えてくれる。
これからの旅の無事を願って祈る。
ふと顔を上げると泉の上が光った。
何事だろうと見ていると1人の女の子が光より現れ、水音高く泉に落ちる。
驚いた。
驚いて、大声で兄者を呼ぶ。
ジグ兄者が駆けつけてくれた時には、溺れていた女の子を泉から引き上げてはいたが、どうすれば良いのか分からずにいた。
考えるのは兄者に任せよう。
助けた女の子は奇妙な薄着を纏っていた。
肩をこえるぐらいの長さの茶色かかった黒髪をしていて、華奢で、触れると、柔らかだった。
息はしているが、気を失っている。
右手には小さな黒い板の様な物を握りしめていて、腕には文字の書いてある薄い腕輪をはめている。
「鈴木冷夏」
自分は文字が読めないので何が書いてあるかわからない。
ただ人間共通語ではないみたいだ。
大地母神が遣わした聖女さまだろうか?
兄者の指示通り、猟師小屋に運び、簡易暖炉の火を焚いて女の子を温める事にした。
濡れた薄い奇妙な着物を脱がせると胸は薄く、肌は真っ白だった。
美しい。
聖女さまだ。
聖女様に違いない。
大地母神が旅に出る我々に遣わしてくださったのだ。
女の子を小屋にあった布で、そっと包んだ。
穏やかな寝息をたてている。
〘冷夏を頼みますよ。デグ〙
どこからか、女性の声が聞こえた様な気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます