第2話 大地母神の泉 視点ジグ

村から一刻ほど離れた大地母神の泉には定期的に来ていた。

貴重な村の水源なので、妖魔ゴブリンや魔獣に荒らされては困った事になるからだ。

村に井戸はあるが、水量は村人が使うので精一杯。

畑などへの水は、この泉からの水が欠かせない。


村の伝承ではその昔、旅の大地母神の[歩き巫女]が杖を突いた所から湧き出た泉だというが、それならば、もっと村の近くの便利の良い場所で突いて欲しかった。

まあ事実は水路造りを指導した[歩き巫女]が居たのだろう。

ありがたい事に今迄、この泉が枯れた事はない。

ただ何度かゴブリンが住み着きかけた事がある。

なので自分達兄弟は今回見回りに来ていた。



自分達兄弟は村で肩身が狭い。

普通なら冒険者を雇う様な仕事を村長の叔父に次々と振られる。

先代村長の祖父が生きていた頃は、まだ[勇者の孫]と言われたりもしていたのだが。


信心深い弟のデグは泉に祈りを捧げている。

出来るなら、泉からの水路や猟師小屋に異常がない事を確かめる手伝いをして欲しかったが、そういう細かい事を弟に望むのは期待できない。

デグに頼めるのは力仕事と木こり斧を振り回す事。

文字も読めないし、計算も苦手、無口で賢いとは言えない。

だが、ただ村で唯一信頼出来る弟。


「兄者!」

そんな弟の声が聞こえる。


「兄者すぐ来てくれ!」

ゴブリンか、下級の魔獣でも出たのだろうか?

はぐれゴブリンぐらいなら数さえ居なければ対処出来る。


「兄者!」

どうやら緊急事態の様だ。

自分は、いつでも抜剣出来る様にしながら駆け出していた。

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