輪廻
あの場の雰囲気に飲まれ、つい話に乗ってしまったがどうしよう。まだ信用しているわけではないがとりあえず明日、話だけでも聞きに行ってみることにした。ただ、時間が経つにつれ、現実世界に戻りたい、そんな気持ちが芽吹いてきたような気がする。この世界の起伏のない生活に飽きてきたという気持ちもある。だが、もっと根本的な部分は別のところにあると思う。何がそんな感情を起こしているのか考えたがわからないが。
しばらく歩いてついたそこは、まるで物語に出てくる城のように大きかった。そのまま門を潜り抜けて中に入る。
「失礼します」
そう言いながらドアを開けると目の前に執事みたいな格好をした青年が立っていた。
「なんの用ですか?」
「その…」
そういえばあの人が法律違反と言ってたのを思い出す。そもそもこの場所の法律ってなんだろうとも同時に思う。返答に困っていると、
「付いてきてください」
そういうと彼は階段の方へと歩き出した。2階のある部屋に案内された。
「グリーフさま。客人らしき者が1人」
「分かった。中へ入れろ」
「かしこまりました。おい、中へ入れ」
「失礼します…」
中はとても広々としていて、王子様が暮らしていそうな感じの内装だ。シャンデリアが光り輝いている。こんなの初めて見た。中には1高貴な服を身に纏っている老人がいた。
「ここに何しに来たんだ」
彼の目つきは鋭く目を合わせていることすらできない。
「すいません…。帰ります…」
なんとかしてこの場から離れないといけないと思った私は足早にこの部屋から出ようとした。そもそもあんな占い師を信じたのが間違いだったのかもしれない。部屋出ようとしたその瞬間後ろから、
「現実世界に戻りたいのか」
私の足は進むことを辞めた。
「リイラから聞いたのか」
彼の方に目を向ける。
「リイラ?」
「あの歳とった占い師の名前だ。あいつから聞いたのか」
「はい」
「分かった。じゃあ、どうして戻りたいのか聞かせてくれるか」
「はい…」
私は深呼吸をする。頭の中で考える。すると、なぜだか今までの記憶の穴がすっぽり埋められたように鮮明に思い出すことができた。
「私は、大事な友達を言葉一つで傷つけてしまった。だから、友達も再び出会って関係も取り戻したい!」
彼はしばらく考えてから私の目をじっくり見て言った。
「わかりました。では、アリアを連れてここに来てください。その後のことはまた話します。あなたが来ることは執事にも伝えておきますので、アリアとともに明日の22時にここで」
「わかりました」
「それともう一つ。くれぐれも誰にも話さないように」
「空。行くよ」
私は空を連れて昨日の場所へ行く。街灯の光が街に散っている。歩いているその時、
「ねえ」
声をかけられた。その声が誰なのかはすぐにわかった。
「沙華さん。こんにちは」
「今からどこか行くの?」
「まあ、少し」
「そう。いってらっしゃい」
「あの。会えるの最後になるかもしれないです。」
現実世界に戻ったら沙華さんと会うことも無くなってしまう。そう考えると寂しくなる。
「そんなこと急に言われても…」
「ごめんなさい」
「いいんだよ。まあ好きに生きなよ。後悔だけはしないようにね」
「ありがとうございます」
私は少し歩く速度を速めた。
「彼女なんか怪しいよ。麗っていう子。少し調べてもらえる?」
「はい。わかりました。何かあったら政府で対処しておきます」
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