第12話 別 離
チリーン…
「いらっしゃい…」
遼輔さんと私は店に戻る。
「地元に、そのまま残るんじゃなかったんだな」
「………………」
「べ、別に残っても良かったですよ?自分の住んでた町ですから」
「じゃあ戻れば?」
「…そんな…追い…」
「お金出して貰って、"お帰り" なんて笑顔で迎え入れられるわけねーだろ?」
言い終える前に言葉を遮られた。
「全く…!50万もあんたに…しかも全て払われてさー、頭上がんねーんだよ!」
「…分かりました…じゃあ荷物纏めて出て行きます!私の顔、見ない方が良いでしょう!?それが大雉さんの望みなんですよね!?」
私は部屋に行く。
「…大雉さん…本気ですか?」
「…だとしたら?…つーか嫌なんだよ!俺自身が!ともかく出て行く出て行かないは彼女次第だし!勝手にしろ!って感じ?俺が彼女に借金したようなものだろ!?」
私は荷物を纏めて出て行く事にした。
「お世話になりました!さようなら!」
私は店を後に出て行く。
「あれ?今の…」
「…藍璃…ちゃん…?」
私の姿を見かける4人。
「…大雉さん…見損ないました…大雉さんを変えてしまったのは…一体…何なんですか?」
私の後を追う遼輔さん。
「藍璃ちゃんっ!」
「………………」
「…俺…2人の間…入れないのかな…?」
「えっ?」
「悪い…俺…帰る」
「あっ!ちょ…昌哉っ!」
後を追う。
「…ちょ、ちょっと!2人共、店、行かないのーー?」
「…今日は…辞めておこうか…」
「…晴南さん…」
その日の夜─────
~ 大雉 side ~
「ただいま」
「お帰り。朋矢、遅かったな」
「…うん…母さんは?」
「出掛けてるけど」
「藍璃ちゃんは?」
「………………」
「答えられない…理由があるって事だね…藍璃ちゃんが俺達の前を走り去って行ってたし…後を追う遼輔さんの姿見れば何かあったとしか…」
「………………」
「まあ…何となく想像はつくけど…第一、それしか理由ないからね」
「だったら、一々、聞く事も話す事もねーだろ?」
「本っ当!兄貴は昔から何にも話そうとしないね!?」
「えっ?」
「何もかも奪われたから何だよ!あー、確かに兄貴はサーフィンも彼女も奪われたかもしんないけど!兄貴は家族がいるじゃん!藍璃ちゃんは家族も彼氏も奪われて人を信じられないという心の傷あって…一人だけ生き残って…その時は本当に頼れる人、誰一人もいなかったんだよ!」
「………………」
「家族と彼氏と来た楽しい旅行のはずが、一気に幸せ奪われて…行く宛なくて…途方に暮れてた…藍璃ちゃんは…2回命を絶とうとして…」
「…2回…?」
「彼女に言われたよ…どうして助けたの?死にたかったのにだった…まだ…事情知らなかったし、この子は、どうして命を無駄にしようとするんだろう?って…」
「………………」
「後で事情聞いて…あー、この子は手を差し伸べてあげなきゃ…シャボン玉のように、すぐ壊れて生きる事から逃げちゃう…そう思った瞬間だったよ…」
「………………」
「無事に退院して、笑顔を見せる姿は…何処か寂しそうで…その後、遼輔さんが彼女に遭遇して、ここの店に……。少しずつ彼女の心に歩み寄るも…彼女はその度に離れて結局、平行線…それから、兄貴が戻って来て…兄貴が彼女に土足で踏み入れてから本心話してくれて聞く事が出来て…彼女は少しずつ心を開き始めていた気がしてたけど…」
「……………」
「兄貴も分かってんだろう?確かに魅南さんが兄貴の為に色々と出したりしたお金だったかもしれない。だけど…ここは…兄貴も魅南さんも利用してた店じゃん!ここがなくなったら魅南さん逆に悲しむんじゃないの?」
「……………」
「みんなが唯一集まる場所を…兄貴が…自ら店を閉めようとしてたもんじゃん!それだけじゃないよ!ここは…俺達だけじゃなくて、地元の人や利用していた沢山のお客さんを笑顔にしてくれる、一時の憩いの場所なんだよ」
「…簡単に言うなよ」
「えっ…?」
「確かに!ここはみんなの唯一の集まる場所だよ!必ず足運んで世間話したりして…みんなの顔見れる唯一の場所だって…だけど…一緒に住んで、一緒に生活している人間から、50万のお金をポーンと出されてさ普通に生活出来ると思うか?」
「…兄貴…」
「戻って来てほしいなら遼輔に頼んで、一緒に連れ戻して来れば?その変わり俺は出て行く。それだけは言っておく」
私達の関係も
みんなとの関係も
少しずつ
少しずつ
離れて行き始める
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