第11話 キ ス ~ KISS ~そして、真実と繋がり~

店を飛び出してから時間は刻一刻と過ぎていき、辺りは暗くなる中、私は途方に暮れていた。



「彼女、一人?」

「どうしたの?何かヘコんでない?」



2人の男の人が声をかけてくる。



「遊び行かない?」

「ヘコんでそうだし楽しい所、連れて行くよ」



グイッ


私の手を掴む。



ビクッ




「や、やだ…離して下さい…!」



何とか離す。




「人なんて信じられないっ!下心あるんじゃないんですか!?」


「言ってくれんじゃん!」


「俺達は全然、その気ないし」



私は後退りし走り去る。




「あっ!おいっ!」



彼らは後を追って来る。



「どうして追って来るの!?」





グイッ


腕を掴まれた。



ビクッ



「きゃあっ!や、やだ!離し…っ…」




抱きしめられる。




「や、やだっ!」



パニックって押し離そうとする私。


正直、恐怖でしかない。



「藍璃ちゃん!落ちついて!」



名前を呼ばれるも全く変わらず気付かない。




「藍璃ちゃんっ!」





次の瞬間、唇が塞がれた。




《…えっ…?》



「おいっ!何処行った?」

「こっちに向かってたはずなんだけどな?」



そんな声が聞こえ走り去る彼等の姿。



唇が離れ、両頬を優しく包み込むように触れられ、しっかりと見るようにされ視線がぶつかる。



ドキン



「…分かる…よね?…俺の事…」

「…遼輔…さん…?」



心配そうな表情で安心したように私を見つめる。



「正解。大丈夫だった?ちょっと出掛けようか?」



私は、頷き遼輔さんと出掛ける。


遼輔さんの車の助手席に乗り車を走らせる遼輔さん。



「キス…ファーストキスじゃなかったよね?」


「えっ!?な、何ですか?いきなり!唐突過ぎますよ!別に大丈夫ですよ」



「それなら良かった」

「でも…遼輔さんとしたのは初めてですよ」

「それは俺も一緒だよ」


「…ごめんなさい…」

「えっ…?」


「いや…なんか巻き込んでしまって…やっぱり…お金絡みは、お互い良い気しないし…良くないですよね…」


「…藍璃ちゃん…」


「分かってはいたんです!だけど…お店の評判もあるし、志歩さん頭悩ませてる感じでしたし…」


「うん…志歩さんに話した上での結果だったんでしょう?」


「えっ…?」



私は一瞬、遼輔さんを見ると、遼輔さんも振り向き一瞬、視線がぶつかり、お互い目をそらし前に視線を戻す。



「あれから藍璃ちゃん以外のみんなと店を閉めてから話したんだ。大雉さんが話をしてくれたよ」


「…そう…だったんですね…」


「うん。あのお金は彼女が自分の為にかけてくれた色々なお金…」



「…えっ!?」



私は遼輔さんを見る。




「大雉さんが、そう話してくれたよ…きっと…繋がってる気がしていたんだろうね…彼女が戻って来るかもしれない…その想いが何処かあったんじゃないかな…?」



私は前に視線を戻す。



「…そう…だったんですね…申し訳ない事…したかな…」




ポンと頭をされる。



ドキッ




頭から手が離れる。



「ねえ、藍璃ちゃん」

「はい」



名前を呼ばれ遼輔さんを見る。



「藍璃ちゃんの彼氏って、いくつだった?」

「…えっ?…18…当時は…18でした…」

「18…じゃあ…今年…もしかして…19になる?」

「…はい…4つ違いでしたし」

「…そうか…」

「…あの…彼氏の年齢が、どうかしました?」



「…サーフィン…してなかった?」

「えっ…?…それは…」

「…やっぱり…」

「やっぱりって…光平(こうへい)を知ってるんですか?」

「…うん…一緒にサーフィンしていたからね」



「………………」



「…知って…いたん…ですか…?」


「うん…だけど…すぐには気付かなかったよ……携帯の待ち受け画面を見るまでは…」




「……………」



「…もしかしてって思う中、でもそれだけじゃハッキリとした明確なものがないから俺は様子を見ながら藍璃ちゃんや、みんなが藍璃ちゃんに接していく中…少しずつ色々と明らかになって…」




「……………」




「…光ちゃんが…"人を信じられない子でさー" って…」



ドキン



「"可愛くて仕方なくて放っておけないんだよなー" って…」



ドキン


私は泣きそうになる涙を堪えるように下にうつむく。


車を脇に停止する遼輔さん。



「余程、君は愛されていたんだね。もちろん…藍璃ちゃんも…夕木光平(ゆうきこうへい)…彼を愛してた…」





ドキン




《…フルネーム…》



私は顔を上げ、遼輔さんを見つめる。



「フルネーム…」

「間違ってないよね?」




私は頷く。





「光ちゃんが彼女である君を、そう言うのは無理ないなって…」

「えっ?」

「…俺も…君に夢中になりそうだから…」




ドキン




「…朋矢も昌哉も…そして…大雉さんも…君の事が放っておけなくて、みんな心配して」


「…遼輔…さん…」


「今…みんなは、どういう想いなのか知らないけど…俺は…君が…好き…」




ドキン




「晴南に別れ告げた時、大雉さんへの想いが晴南にあった事は薄々気付いてる中、晴南も俺に遠慮して申し訳ない思いがあって言えずにいて…そんな俺の想いも複雑で…藍璃ちゃんだったり、晴南だったり…」



「…遼輔さん…」



「まあ…それが…今の本音…かな…?ゆっくりで良いから。一先ず、大雉さんと仲直りしなよ。まずは、そこが優先かな?」


「…そう…ですね…」




「さて!何処か行く?リクエストあるなら連れて行くよ。それとも自分の町に戻る?」


「えっ?自分の…町…?」


「…育った場所。16年間、藍璃ちゃんファミリーや光ちゃんが一緒に共に過ごしてきた場所」




ドキン



「…えっ…?」

「…実は…この前…」





~ 遼輔 side ~



【…遼ちゃん…遼ちゃん…】







夢……?




現実……?



誰……?





「…光…ちゃん…?」



【…俺の住んでた町…行って欲しい…】




そう言って消えたかと思ったら


俺は目が覚めた


そして


夢だったんだと────




それから俺は車を走らせた


まるで何かに導かれるように────



だけど運転していくうちに


俺は記憶が蘇るように


あることに気付き始めた




すると


1つの家に辿りついた





「…夕…木…?」



表札に書いてある名前


俺は すぐに分かった



インターホンを押すと女の人が出てきた


光ちゃんの母親だ




「あなたは…」

「…すみません…突然に…ご無沙汰してます」





その時 彼女・藍璃ちゃんの話になり────





「…良い娘さんだったわ…でも…光平と出掛けて帰って来てないから…無言の帰宅になったのかしら……」




×××××××××××




「…お義母さんが…」


「心配してる様子で気になってみたい」





××××××××××××



「………………」



「…生きてますよって余程言おうと思ったけど…まだあやふやな部分あったから…」




×××××××××××××




「…もしも生きていたら何か事情があるのかもしれませんよ」



「だと良いんだけど…もし生きているなら…藍璃ちゃんには、一目会って話がしたいわ…」




××××××××××××××



「…お義母さんが…私と…?」



「うん。光ちゃんの母親から君の名前が出た時、確信に変わった。彼女・深山藍璃は、間違いなく光ちゃん…夕木光平の彼女だって。光ちゃんは俺に教えてくれたんだろうな~って…そして、戻って来てから、あんな事あって…」




「………………」



「…遼輔さん…お願い出来ますか?」


「えっ?」


「私の住んでいた町に…」


「…了解!じゃあ行こうか?」


「はい…」




遼輔さんは再び車を走らせた。





しばらくして────




「…ここ…」



私は一戸建ての家に目が止まる。




「遼輔さん!車停めてっ!」

「えっ!?」




キキーーッ!


急ブレーキを踏む遼輔さん。




「ごめんなさい」

「いいよ。どうかした?」



私は車から降りる。


家のドアノブに手を掛ける。




ガチャガチャ


鍵がかかっている




「…藍璃ちゃん…?」



「………………」



私はドアに手を置く。




「…パパ…ママ…ただいま…遅くなって…ごめんね…」



「………………」




俺は彼女の後ろ姿を見つめる




寂しそうに


背中が泣いているように見えた俺は


居ても立ってもいられず


背後から抱きしめた




「…遼輔…さん…?」


「…君は…一人じゃないよ…」




「…………………」



「…みんな…心の中に生きてるから……」




遼輔さんは私を振り返らせると抱きしめ、


私は遼輔さんの胸の中で泣いた。




次の日、思い出の地を車で走り歩いてみたり過ごしていた。





そんな中────



~ 大雉 side ~




「藍璃ちゃん…大丈夫かな?」と、朋矢。


「遼輔が一緒だから平気だろ?」と、俺。


「えっ?遼輔さんと?」と、朋矢。


「大雉さん知ってたんですか?」と、昌哉。




「夜、連絡あった。今、藍璃ちゃんの地元にいるんだと」


「どうして遼輔さんが知っているんですか?」と、昌哉。


「藍璃ちゃの彼氏、遼輔と仲良かったみたいだけど?サーフィン仲間だったとか?」


「…それって…遼輔さん…有利じゃん」と、昌哉。


「何、有利って、どういう事?」と、朋矢。


「…それは…何でもない!帰ろ…」




昌哉は帰って行く。



「あれ?昌哉、帰るの?あっ!ねえっ!藍璃ちゃんは?」

「…遼輔さんと一緒らしいけど?」

「えっ!?遼輔と?」

「…遼輔さんと…一緒?えっ?どういう事…?」

「詳しい事は大雉さんに聞いて」



入れ違いで蓮花ちゃんと晴南ちゃんが来る。


そして、私の事を聞いたのだった。
























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