第9話 訪問者
チリーン…
「いらっしゃいませーー」
「すみません、こちらに天津木大雉さん、いらっしゃいますよね?」
2人のスーツを来た人達が店に現れた。
「あの…どちら様…」
「良いから出してもらえれば良いんだよ。お姉さん」
「…すみません…今、買い出しに行ってて…」
「そう…じゃあ待たせてもらおうかな?」
ドカッと大股広げ大きい態度を見せる彼ら。
「………………」
そして大雉さんが戻って来て、私は、すぐに報告した。
「ごめん…ちょっと席外してもらえるか?」
「でも…店…」
「大丈夫。すぐに終わらせるから。奥に行ってな」
私は渋々奥に行った。
「あら?藍璃ちゃん、どうしたの?」
「それが…表…」
「えっ?」
少し顔を出す志歩さん。
「…消費者…金融…かしら…?」
「…えっ…?」
「あの子…突然帰って来るから、おかしいとは思っていたけど…」
そして2人を帰す大雉さん。
「大雉…説明してくれない?時々、妙な電話もかかってきてたし…おかしいなとは思っていたけど…気になっていたものの敢えて何も聞かなかったけど…借金でもあるの?何なら私が……」
「大丈夫。何の問題もねーよ。俺の問題だし、もう残りも少ないから母さんの力は借りない。もう23歳だし」
「本当に大丈夫なの?」
「大丈夫。サンキュー。母さん」
その後、度々、店に現れる2人。
「ちくしょーーーっ!」
ガンッ
椅子を蹴る大雉さん。
ビクッ
今まで見た事のない大雉さんの態度に驚く私。
「…大雉さん…?」
「…悪い…ちょと出てくる」
「大雉さんっ!!」
大雉さんは店を出て行く。
「大雉さん…」
店を出てすぐに、志歩さんと八会う大雉さん。
「あら?大雉…店…」
「悪い…ちょっと出て来る」
「そう?…気を付けてね」
「ああ」
チリーン…
「いらっしゃい…」
「藍璃ちゃん…?何かあった?」
私は事情を説明した。
「…そう…あの子昔から何かあっても全然話そうとしないのよね…」
「えっ…?」
「お兄ちゃんだからというのもあったのかもしれないわね…我慢させてた部分あるのかも…」
「…志歩さん…だけど、今まで頑張って育ててきたわけじゃないですか。もし、我慢させていたとかとなれば、その分彼女にはありのままの自分出していたんじゃないんですか?」
「えっ?」
「ごめんなさい…私…色々あって…家族や彼氏には、自分の恥ずかしい所や弱い所とか…ありのままの自分を晒(さら)け出していたので…」
「…藍璃ちゃん…」
「あ、すみません…」
「ねえ、藍璃ちゃん、大雉の後、追ってもらえる?」
「えっ?」
「歩いて外出したからそんな遠くには行かないはずよ。もし行くなら海じゃないかしら?」
「でも…店…」
「大丈夫。こっちは心配しないで」
「…分かりました。後追ってみます」
「ええ。お願いね」
私は大雉さんの後を追った。
そして案の定、大雉さんは海にいた。
「…あれは…ウエットスーツ…確か朋矢君達も着てたっけ?」
しばらくして波乗りする大雉さんの姿。
ドキン
その直後─────
「…あれ~…?」
ビクッ
突然の声に驚く私。
視線の先には
「…遼輔さん…?」
「珍しい~!大雉さんがサーフィンしてる~」
私の隣に来る遼輔さん。
「流石~!だけど…サーフィンして平気なのかな~?…藍璃ちゃん、大雉さん何かあった?」
私の方を見る遼輔さん。
「えっ?」
「いや…波乗りするって事は…何かあったんじゃないかな~?と思って」
「…それは…」
そして大雉さんの姿を見つめながら
「みんな…大雉さんの姿見てサーフィン始めなんだよね~」
「えっ?…そう…だったんですね…」
「沢山のサーフィン仲間に囲まれてて…今じゃ高卒してから大雉さんとつるんでいた仲間ほとんどバラバラになっちゃって…今じゃ良き師匠みたいに兄貴みたいに俺達みんな慕ってんだよね~」
「遼輔さん…」
「大雉さんが辞退する事になった時、凄いショックで…」
「…そうだったんですね…あの…遼輔さん…」
「ん?何?」
振り向く遼輔さん。
「…大雉さん…彼女…いたんですよね…?」
「あ、うん…いたよ~。可愛いくて大雉さん似て面倒見が良くて……彼女が、どうかした?」
「…大雉さんは彼女に…自分の弱い所とか…ありのままの自分を見せていたと思いますか?」
「えっ?」
「あ…ごめんなさい…やっぱり良いです」
私は大雉さんを見つめる。
「…見せてたと思うよ」
「えっ?」
私は遼輔さんを見る。
そんな遼輔さんも振り向き視線がぶつかる。
「好きな人だし。自分の彼女なら尚更、晒け出していたと思うよ。お互いの事、信頼してなきゃ恋愛も成立しないんじゃないかな?相手の事を知る事、晒け出さなきゃ何も分からないからね~」
「…そうですよね…私も彼氏に見せてたっけ?……あの…すみません、遼輔さん。大雉さんをお願い出来ますか?私、店に戻ります」
「OKーー」
私は店に戻る事にした。
「あら?藍璃ちゃん、もしかして大雉と会えなかった?」
「いいえ。会えましたと、いうか海でサーフィン…してました…一応、遼輔さんが来たので任せてきました」
「そう?」
「はい…志歩さん…あの…折り入ってご相談があるんですけど…」
「相談?何?」
私はある決心をして志歩さんに話を持ち掛けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます