第51話 偵察

「さて、と。お嬢の手前格好つけたはいいが、こっからは地味に行くっきゃねぇよな。」


 そう自分に言い聞かせながら広場を通り過ぎる。

 先ほど村長が引き摺られていった方を伺いながら、身を隠しながら慎重に歩を進める。

 が、嫌な空気こそ感じるものの、目に見えた異変は今のところない。


「まだ寝てやがるってのは、さすがに楽観視しすぎだわな。」


 そう独り言ちた俺は、手近にあった民家にそっと入り込む。


「わりぃが邪魔するぜ。」


 そう誰に言うともなく、断りの言葉を入れつつ俺は、音を殺して二階部へと移動する。

 どこの町でもそうだが、門から遠く、長の家の近くには上流階級者が多い。

 そうすると住居にも金をかけるもんで、門近くは平屋の割合が多い反面、奥に行くに従って階建ての住居が増える。

 この家も調度品などを見るにつけてもそういう部類の家になるんだろうが、、、人の気配はない。


「まぁ、食われたってことなんだろうな。」


 あまり荒らされた形跡もないことから、やはり今回のバケモンはパワータイプってよりは搦手に長けたやつなんだろう。

 家の状態から、少なくとも二、三日は無人だったと思われる屋内を進み、村長宅に面したと思われる雨戸を開く。


「たっけぇなぁ。」


 下を向いて思わず呟いてしまう。

 高低差ってのは見上げるのと見下げるのでは全く感じ方が違う。

 見上げると高く感じるところでも、見下げると意外と高くないように感じてしまい、その感覚に従うと大変なことになることが多々ある。

 が、こちとら色んな所から落っことされちゃぁいるわけで、そいつらと照らし合わせるとまぁ、落ちたらただじゃ済まん高さなのはわかる。


「っても、村長んとこ覗くにゃ、幾分足りねぇな。」


 そう独り言ちて、俺は窓枠から身を乗り出し、上を見やる。

 

「お、おあつらえ向きのがあんじゃねぇか。」


 なんとか届きそうな屋根の桟に手を伸ばし、


「ふぅぅ。」


 呼吸と共に思いっきり体を引き上げる。

 屋根が折れないことを何度も祈りながら、何とか身体を屋根の上に引き上げることに成功した。


「っつぁ、きっつぅぅ。はぁ、はぁ、久々にやったがこいつはシャレになんねぇな。」


 呼吸を整えつつ、塀の向こう、村長の家と言われた方を見やる。

 塀の向こうには庭があり、その先に2階建ての大きな屋敷が見える。

 一度挨拶にはいってるが、正直大きさなんて大して覚えていなかった。

 だが、こうして改めてみると、


「でっけぇなぁ。あそこに入って一個ずつ部屋開けながら、バケモン探すのは流石にぞっとしねぇな。見た目、異常はねぇようだし、どうすっかなぁ。」


 そう口に出しながら思案にふける。


 と、そうこうしている内に、


『カーン、カーン、カーン、カーン、、、、カーン、カーン、カーン、カーン、、、」


 遠くから鐘の音が聞こえ始める。


「、、、あいつら、やっぱ、やりゃできんじゃねぇか。」


 そん時の俺の口元は多分笑っていただろう。

 それを意識してしまい、バツが悪くなった俺は、舌打ちをし、、、


『ゴゴゴゴ、ゴゴゴゴ、、、、』


「んだ?」


 村長の屋敷が断続的に揺れている。

 その揺れは、最初は小さなものだったが、徐々に大きくなっていく。


「あーってことは、外に出てくるつもりか?」


 そう暢気に眺めている俺の目の前で、屋敷の揺れはどんどん大きくなっていく。

 それがひときわ大きくなったかと思うと、瞬間、揺れが収まる。

 そして、数瞬後、そいつは玄関扉をぶち破って姿を現した。


「でけぇ、、、とは思ってたが、ここまでとはな。」


 そこには数十本の細い触手を箱の隙間から生やした熊牛一頭を丸々入れてもおつりが来そうなバカでかい宝箱が鎮座していた。


「野郎、地下から自分の身体を触手で引っ張り上げやがったんだな。」


 外に出たためか、動きを止めている宝箱を見やりながら俺はそう独り言ちる。


「しっかし、洗脳するってだけでも、めんどぅくせぇのに、手数がそろっていやがる。正直、俺の手には余る代物だが、、、まぁ、あいつら、タクに啖呵切っちまった手前、ただずらかるって訳にもいかねぇわな。」


 宝箱から伸びた触手が一本、また一本と蠢き始める。

 先端が手のようになっている奴もあれば、丸いやつもある。

 それらで周りのものを器用につかみながら、宝箱は前進を始めた。


「屋外は掴むもんがすくねぇだろうから、塀をぶち破るには時間がかかりそうだな。」


 俺はそう最後に独り言ちると、屋根の桟に手をかけ、振り子の要領で出てきた窓から家の中に戻る。


「まずは裏口から近づいて、奴の注意を引く。あとはまぁ、出たとこ勝負で、時間稼ぐっきゃねぇな。」


 そう今後の方針をまとめつつ、俺は急ぎ暗い室内を駆け抜けるのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 終わらんかったです。


 もう、3月もいろいろなことがありすぎて。

 そして、4月も鬼のような仕事を振られ、、、私はちゃんと責務は全うしたはずなのになぁ。何故?

 愚痴です。

 すみません。


 物語はもうすぐ佳境。

 書きたいことは決まっているのに、なかなか推敲の時間がなく、申し訳ありません。

 3月末は無理そうですが(というかもう末ですが)、誠心誠意頑張っていきますのでもう少々応援のほどよろしくお願いいたします。


ほむひ

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