第42話 長閑
「おじちゃーん、こんにちわ!」
「おう、モクランじゃねぇか。どうした?なんか買いに来たんか?」
「ちがうよー、今日はね、ミクおじに村を案内してるんだ♪」
「へーえれぇじゃねぇか。」
「えへへ、でしょ。それでね、この人がミクおじよ。」
急に紹介されて動揺しつつも、
「あー、どぅも。ミクラと申します。モクランにはいつも世話になって、、、」
と、挨拶しようとするが、それは途中で遮られてしまった。
「お前さんが、ミクラかい!いやー初めましてなのに、全然そんな感じがしねぇなぁ。モクランがここに来るたびに、いろいろと話していたせいかねぇ?がっはっは。いやいや、今日はお近づきのしるしだ。まずはこれでも食ってくれ。」
そう言われて、パンに干し肉をはさんだと思しき軽食を人数分差し出される。
「え?おじちゃんこれって?」
「あ?いいってことよ?モクランがいっつも、凄い凄いって言ってる、ミクおじさんに会えたんだ。こんぐらいは俺のおごりにしといてやるよ!」
「んに゛ゃ、ちが、、、あわわわ、ちっ、ちがうからね、ミクおじ!モクランそんなこといってないから!」
モクランから変な鳴き声が聞こえた気がしてそちらを見ると、顔を真っ赤にしながら、あわあわと必死に何かを弁解している。
苦笑しつつ、乱暴にモクランをなでると、面白い顔でこちらを見ながら固まっている店主の手から人数分の軽食を受け取る。
「すまねぇな、この礼はまたいずれさせてもらうよ。」
「あ、、ああ。」
「それじゃ。」
軽食を二人に手渡しつつ、まだ何事かごにょごにょ言っているモクランの背を押して、俺たちは広場を目指して歩き始める。
少しして、すっかり大人しくなってしまったモクランの顔を覗き込むように、タクが問う。
「、、、モ、モクラン、だいじょぶ?」
「、、、もう、しらないっ」
未だ顔を赤くしているモクランはその問いに至極短く返したと思うと、ふいっと顔をそらし、あらぬ方を見ながら、もう話しかけるなとばかりにもらった軽食をほおばる。
俺はそれをほほえましく見ながらも、同じく軽食を口に入れ、
「(ぐむぐむ)お、こいつはいいな。パンは少しかてぇが、香辛料と塩気の効いた干し肉の味がいいし、思ったよりも柔らかくて食いやすい。こりゃ、王都で出したって売れるんじゃねぇか?」
と、少し驚きつつ、独り言ちる。
それに対し、モクランに袖にされたタクがすかさず、
「、、、そう、だよ。おじさんの、ご飯は、おいしい、の。」
と食いついてくる。
そこからはこの村のおいしいものについて、タクが身振り手振りで紹介してくれつつ、広場を目指すことになった。
ただ、タクはあまり調理をしたことがないのか、
「、、、まるいかたち、のパン、に、白いタレ?とお肉?が、入っていて、あつい、けど、おいしいの。ぼく、はそれが、すき。このくらい、の大きさで、オニオン、っていう、の。でも、モクランは、もっと、あまい、、、」
と、形と名前、あとはしょっぱいか甘いかがわかる程度の解説となってしまい、正直どんな料理なのか想像が難しい。
それを少し聞いていたのだが、
「もう、タクはモクランがいないとダメなんだから。。。」
の一言を皮切りに
「オニオンはね、ねぎ玉と
「、、、そう、だった?」
「そうだった。」
「、、、う、ごめん。」
「もう。あと、モクランの好きなのは野苺餡のパンよ!タクったら、ちゃんとおぼえててよね!」
「、、、ご、ごめ、、」
「じゃぁ、こんどはかじさやんにいくよ」
「、、、うん」
「ミクおじっ!こっちよ!」
と、いつの間にやらモクランの機嫌も直っているのだった。
こうして、麗らかな日差しのもと、楽しい散歩はまだ続くのだった。
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本日の震災により、新年の日本は、「あけまして、おめでとうございます」と、言って良いのかどうかわからない状況になってしまいました。
幸いにも私の住む地方では影響はほぼありませんでしたが、不安な日々を余儀なくされてしまった方々もいらっしゃることでしょう。
まずはご自身、ご家族の命を守ることを最優先としていただければと思います。
遠地故、すぐにご支援等を行うことは難しいですが、何かしら皆様のお力になれることを考えていきたいと思います。
被災された方々のご無事をお祈りしつつ、まずは新年のご挨拶と代えさせていただきたいと思います。
ほむひ
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