第41話 案内

「ここがね~門だよ!」

「しってるわ」

「ぶぅ」

「、、、で、でも、さいしょがだいじ、、」

「そうだよ!」

「わぁったよ。」


 モクランが楽しそうにくるくる回りながら、先導していく。

 その後ろを俺とタクが並んで歩いているのだが、ホントに何が楽しいんだ?

 いつも以上にテンションがおかしいモクランを多少心配しながらも、俺は連れられるがままに歩みを進める。


 薬師の家はどうやら、門から見て北東の外れにあるらしい。

 木立に囲まれた広い庭の先には裏門があるだけ。

 俺はそんな外れから、塀伝いに歩かされてようやく正門までたどり着いていた。

 東側は主に田畑らしく、なんとも長閑な風景が延々と続く道中だった。

 その間、モクランがずっと「あのはたけはねぇ、○○さんのはたけなの、カボとかがいっぱいできるのよ!あまくておいしいの!あとねぇ、、、」の様に畑の説明を事細かくしてくれていた所為で、畑には大分詳しくなったような気がしていた。

 

「ここからまぁっすぐいくと、村長のお家です!」

「いや、それはさすがに説明が雑すぎやしねぇか?」

「そぉ?」

「、、、このさき、に、ひろば。ひろばで、はたけの、ほう、と、シュレイさんのおうちの方、と、はたけのほう、あと反対がわのかべ、のほうに道が分かれて、る。ひろばのむこう、まっすぐおくにいくと、十五個くらい?おうちがあって、さいごのつきあたり、が、むらおさのいえ、だよ。ひろばまでは、、十くらい、かな?おうちが、みちの、りょうほうに、ある、ります。おみせも、こっちがわです。」

「タクはえれぇな。たどたどしいが、ちゃんと説明してくれる。」

「もう、なによぅ。タクばっかり!」

「いや、お嬢も助かってるよ、あんがとな。」

「えへへ」


 さっきからずっとこの繰り返し。

 お嬢が説明し、タクが補足し、俺がほめる。

 しかし、お嬢はなんでこう、説明が大味なんだろうか?一つ一つの掘り下げ方は凄いのに、全体の説明は男らしいの一言に尽きる。

 初めの畑の説明に至っては、


「ここがねぇ、みんなのごはんをつくっている、畑だよ!」


 だった。

 初めだったこともあり、


「お、おぅ、すげぇな。」


 と相槌を打っていたが、そんなこんなが二度三度と繰り返されるうちに、冒頭の突っ込みにまで至ってしまっていたのだった。まぁ、お嬢も口では不満そうだが、顔は笑っているのでいい(?)としよう。

 因みに


「畑だよ!」

「お、おぅ、すげぇな。」


 の後は、タクがちゃんと


「、、、こ、この村は、くにざかい(?)、へんきょー(?)に、ある、らしいの。だ、だから、はたけは、ほかのけものとかに、た、たべられないように、かべのなかに、あるん、だ、って。ほかの、とこは、かべがない、とこが多い、みたい、だから、めずらしい、かも?」


 ときちんと補足を入れてくれていた。

 どもりながらぼそぼそ話す所為で、評価されづれぇのかもしれねぇが、タクはタクできちんとしていやがる。


「しっかし、話を聞く限りかなりひれぇ村だなぁ。しかもきちんと壁で外は囲っているし、この規模をこんなはずれでやろうと思ったら、すげーたいへんだったんだじぇねぇか?」

「ふふん!そうでしょ!父様はすごいのよ!」

「あん?先生が?」

「そぉよ、父様が来て、みんなをおしえて、つくった壁なのよ!はじめはチョウにぃとかもいて、みんなで作ってたんだけど、途中からソウ様に呼ばれてみんないなくなっちゃったから、村の人と父様で最後までかんせいさせたのよ!すごいでしょ!」

「お、おう、すげぇな。」


 そう相槌を打ちつつ、初めて聞く名前に、俺は引っ掛かりを覚えた。どこかで聞いたような名前だったからだ。

 だが、それがなかなか思い出せない。

 そう思い、お嬢に探りをいれようと、


「で、そのチョウにぃとか、ソウ様ってのは誰なんだ?」


 と聞いてみる。

 もしかしたら、薬師の素性がわかるかもしれない。

 そう思ったのだが、、、


「しらない。」

「んな、知らないって、なんだよ。」

「だって、しらないんだもの。チョウにぃは声も体も大きいこわいひと。すっごく力もちでつよいのよ。でも、ソウ様はあったことないわ。みんなのお話にでてくるだけ。あ、見て、もうすぐご飯のおじさんのとこよ!」


 走り出したモクランの後姿を見ながら、俺はこの村がハズレであったことを薄々理解するのだった。

 この村はやつら、人狩り共とは多分関係がない。

 薬師が来る前までは本当にさびれたただの村だったのだろう。

 それを薬師とその仲間が変えた。

 何のためかはわからん。

 が、多分俺の復讐さがしものには関係ねぇんじゃねぇかと、思う。

 まぁ、感だが。

 それでも、一度薬師の野郎を問い詰めてやる必要はありそうだ。


 お前がどこのだれで、何の目的でこんな辺境にいるのかを、な。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ほむひです。


 みなさん、私のつたない文章をいつも読んで頂いてありがとうございます。

 

 2023年も残すところあと僅かになりました。

 短編を予定していた本作でしたが、思いのほか長くなってしまっており、、、個人的には2023年中に完結を目指していたのですが、どうやら難しそうです。

 新年は早めに更新再開できるよう、頑張りますので変わらぬご愛顧のほどよろしくお願いいたします。

 ではでは、皆様よい年越しをお過ごしくださいませ。

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