第23話 崩壊

 「・ ・ ・」

 

 すべてを読み終えた俺は、ただその場で立ち尽くしていた。

 頭の中は日記の中身とこれまでの事が渦を巻きながら、浮いては消え、浮いては消えを繰り返し、考える、ということがもうできない。


 村長は俺たち家族を売った?

 キンに恨まれていた?


 村を壊したのは人買い?

 そいつらを連れてきたのがキン?

 

 もう訳が分からない


 スゥもナタクも連れていかれた?

 隣国の王都はどんなに急いだって、徒歩では二月はかかる

 売られちまってたらもう手遅れだ

 どうしたらいい?

 どうしたら?


 訳が分からない


 村長は死に、ギンは消えた。

 キンももしかしたら、もういないのかもしれない。

 一体全体何だってんだ?

 誰か俺に説明してくれ

 夢だと言ってくれ


 訳がわからない


 何かをしなくちゃ

 どこかに行かなくちゃ

 みんなを追わなくちゃと思うのに、足が一向に動かない

 俺の体はどうなっちまったんだ?


 ワケガワカラナイ


 スゥやナタクの顔が浮かぶ

 切れ長の目、勝気な顔、俺には勿体ないほどの美人の嫁

 クールに見えて、驚いた時に頬を染め、ふにゃりと笑う笑顔が見たくて、何度もサプライズを決行したっけ。

 俺に似た黒髪黒目。でも、二人のどちらにも似ていないふくふくとした柔和な顔立ち。

 あまり言葉はしゃべらないが、袖を引いたり抱き着いたりと、ようやっと俺にもなついてくれ始めた可愛い息子

 可愛いなんて言ってやったことはない

 あの日だって、朝、頭を軽くなでて「じゃぁな」といっただけだった。

 あの時はこんな、こんなことに、なるなんて思わなかった

 恥ずかしがらねぇで、もっとたくさん話してやればよかった

 遊んでやればよかった

 一緒にいてやればよかった

 もう、あいつらとは会えないのか?


 ワケガ、、、ワカラナイ


 俺の掴んだ幸せはどこにいっちまったってんだ?


 ワカラナイ


 この地獄は一体なんだ?


 ワカラナイ


 俺が何したってんだ?


 ワカラナイ


 もう、


 ナニモ


 カモ 


 ワカラ、、


 、、


 、



 「あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁ、、、、、」


 遠くで醜い声が聞こえる



 これは誰の声だったろうか?



 動物だろうか?


 

 もう俺には



 そんなことも


 




























 ワカラナイ

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