第22話 真相

 「っんっだこりゃ?」


 あまりの訳の分からない内容に絶句しつつ、衝動的に引きちぎってしまいたくなる気持ちを何とかこらえる。


 「ルゥの行方不明なんざ聞いてねぇし、人買いだぁ?一体全体何がどうなってやがる?」


 叫び、日記を振り上げる。

 が、その手は日記をたたきつけることができず、宙を彷徨う。


 あまりのことに、どうしたらいいのかわからず、振り上げたこぶしの下ろし先もわからぬまま、俺は木偶のように、村長の日記をただ読み続けるしかできなかった。

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〇月×日 あれから、、キンからの連絡はない。噂ではD村に出た宝箱の討滅を行っているとか。儂にはなんの連絡も寄越さず、宝箱なぞにかまけおって、信じられん。だが、もう儂には待つことしか。。。

 

〇月×日 山を震わす轟音に、劉河砲が使われたことを知った。彼奴等何を考えておる?慌てて、そちらに向かおうとするも、丁度森から出てきたギンにとめられる。

 「おぅ、村長ぁ。今はあっちにゃいかねぇ方がいいぜぇ?死にたくなかったらなぁ?」

 だと?こやつ等、村長である儂をなんだと思っておる?ニヤニヤと笑いおって。しかも、

 「見に行くよりゃぁ、なぁんも知らねぇ奴らを安心させてやる方が先じゃぁねぇのか?」

 などと宣いおる。が、ここで言い争っていても仕方がない。儂は村をまとめることを先決した。

 「D村を襲ったバケモノがこちらに向かておる。だが、儂の命により、キン率いるハンターとサンゾウで討滅に動いておるの心配はいらん。先ほどの音も、古より伝わりし村の守りが作動した音じゃ。じゃから、皆、恐れることはない。念のため、今日は家々に戻り巡りをしたうえで早々に休みなさい。」

 と言ってな。

 儂だって状況の一つもわからんのにじゃ。

 自分で書いていて、情けなさに涙が出そうになる心境じゃ。

 そうこうして気づけば、ギンはその場にも、村の中にも姿が見えなくなっておった。彼奴等め次に会ったら問いただしてやらねば。

 



〇月×日 どのくらいたった?

 あんなに痛んだ体も、今はだるいのみ。

 もう長くはないじゃろう。

 これが誰かの目にとまり、憎き人買い共を、滅してくれればと思い、ここに記す。


 劉河砲の夜、儂はキンに刺された。


 夜半過ぎ、怒声と悲鳴で目が覚めると、村は火に包まれておった。


 慌てて戸口に出ると、奴がいた。

 「よぉ、村長」

 そいつは笑っているような、無表情のような怖気のする顔で近づいて来た。

 やつは キンはこんな顔をするやつだっただろうか?

 儂はそう思った。

 無防備じゃった。

 じゃから、もう、おわっておった。


 悪魔の

 「これにて、契約は終了だ。」

 という声を聞いた時には。


 激痛

 腹が燃えるように冷たい

 あまりの痛みと気持ち悪さに声すら出せぬ


 そして悪魔はいった。

 「約束通り、ルゥに会いに行け。」

 

 一瞬何を言われたのかわからんかった。

 そして、奴の足の裏が見え

 衝撃と痛みに儂は意識を失った。


 「村ももう終わりだ」

 という声を最後に。


 燃えていた。

 儂の目に映ったのはそれだけ。

 炎から逃げるよう後ずさり、隠し部屋へ逃げた。

 腹からは見たことのない剣がはえていた


 なんとか部屋までたどりつくと、下から、音

 悪魔がすべてを奪いに来たと悟った


 逃げたい

 じゃが、体はうごかん

 隠れなくては

 せめて扉だけでも

 そう思って手を伸ばしたが、手は何もつかめず、倒れた

 

 許しを請うつもりはない

 が、多分儂の姿は懺悔のようにみえたろう


 剣が儂を穿つのが分かる

 痛みに呼吸もできん

 

 気づけば闇に、無法者がいた

 悪魔の使いじゃろう

 汚い、本当に汚い顔、そして、こえ 


 嫌だ、いやだ、いやだ

 それしか考えられんかった


 だが、やつらは儂を見下ろしただけ

 何か言っているのが聞こえた


 「くたばってやがる」


 だったか

 儂は動くこともできず、ただそこにいた

 

 やつらは部屋を漁った。

 ここにあったすべてを

 たおし、ばらまいた

 儂の全てを

 この村の記憶を


 だが、もうそれもどうでもいい

 燃えてしまったのだから 

 

 奴らはひとしきり暴れると儂の頭の上で話始めた

 

 村をもやしたこと

 さっさと村人金にして、楽しく過ごしたいこと

 隣国は遠いこと

 上玉がいたこと

 それがあばれてたいへんだったこと

 金ぴかがうるさい、早く処分したいこと(キン  か?)

 このあと宝箱を呼んで暴れさせること


 聞くに堪えないざれごとのかずかず

 だが、村がおわったことだけは わかった


 ああ、かみよ、だれでもいい

 やつら、ひとかい共に天誅を。

 

 そしてキン、ギン

 主らを儂はけしてゆるさん

 だが、キンよ 

 おまえももう おわり らしい

 



 地獄で まっておる ぞ


~村長の日記より~

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