第14話 決心
「っはっはぁ、、はぁっ」
俺は森の外を目指して、ひた歩く。
疲れ切った体、押し寄せる空腹感、見知らぬ森。
外れた右肩は入れはしたもののまだ熱を持ち、満足に動かすにはまだまだ時間がかかりそうだ。
ポーションの効果は既に切れ、疲労のため、足元もおぼつかない。
その上、さっき転んだせいで口の中が青臭く、呼吸する度にむせ返りそうになる。
くそったれ。
頭の中はもうその言葉だけでいっぱいだった。
だが、声を出すわけにはいかない。
先ほどまではもう独り言ちるしか自分を奮い立たせる術がなかったが、転倒し、足も上がらない現状、声を出すのは自殺行為にしかならない。
というか、今朝がたは感知範囲さえ外れれば、ガン無視を決め込んでくれていたくせに、今のしつこさと言ったらなんだ?
息遣いの音さえも捕えて、こちらを追跡してきやがる。
こっちは走ることすらままならねぇってのによ。
しかも、土地勘もない暗い森の中。
こちらは体力を使わせられるのに、あっちは障害物関係なしに突撃してくる。
どう考えたって、捕まるのは時間の問題だ。
それでも逃げ続けるしかない俺は、川の上流方向で、森の切れ目がありそうなところを目指して歩き続けるのだった。
。。。
。。
。
それから何時間たっただろうか?
いや、そんなに時間は経っていないのかもしれない。
もうそんなことはどうでもいい。
俺は叫ばずにはいられなかった。
「っちっくしょうめ!」
俺が何をしたっていうんだ?
逃げ続け、やっと森が開けたと思って、たどり着いた先は垂直に切り立つどん詰まりの崖だった。
万全ならば登って登れないことはないだろうが、
ずん、、ずん、、ずがん、、ずん
ほぼ一定の速度で追いかけてくるあいつに追いつかれる方が、多分早いだろう。
この広場を出て、崖を迂回する方向に逃げる手もあるが、もう流石に体力的に限界が近い。
もういっそここらでケリをつけようか?
そんな感情が首をもたげてきた。
相手は多分諦めることはないだろう。
キンをずっと追っていたことからして、余ほど執念深い奴だとおもわれる。
触手をぶった切っただけでもそうだったんだから、目を潰し、川に落としまでした俺を許すことはまず、ないだろう。
それに、なにより、戦うならばまだギリギリ体力のあるここを逃すと後がない。
長年の経験が俺にそう教えてくれる。
ならば、ここで、、、
そう心を決め、最後のポーションを飲み干す。
口の中にあった青臭さと、ポーションの不味さが交じり合い、思わず吐き戻しそうになるのを何とか堪える。
ポーションの効果が出るのを待ち、心と呼吸が落ち着くのを待った。
急に音が消えたので、あちらは俺を見失っているのだろう。
歩む音もなく、森を静寂が支配している。
体が徐々に暖かくなってきた。
ポーションの効果で、右肩の熱もわからなくなる。
疲労も気にならなくなってきた。
そうして、頃合いを見計らい、俺は大きく息を吸った。
そして、
「ああ、もうかかってこいやぁぁぁ」
夜の森に俺は絶叫した。
それに呼応するように
「$&)’#$()~~~~~!!」
森の中から雄たけびが聞こえた。
そして、凄まじい足音を響かせること、数分。
森が裂けた。
木々を吹き飛ばして、今日だけで何度見たかわからない巨体が姿を現す。
が、その巨体は4本中1本が完全に欠け、残りの3本も何かしらの損傷を負った状態だった。
その姿を見て、少し驚いた俺だったが、
「、、、お互い満身創痍だな。」
そう自嘲気味の笑みを浮かべて、その巨体に向けて走り出す。
「さぁ、最後の追いかけっこを始めようか。」
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ハンターやってて死にそうになったことかぁ。
そらもう数えられねぇくらいそういう目には遭ったし、何より戦いってのは毎回命懸けだ。
一戦一戦、どんなに準備しようとも死にそうな目には遭うもんだ。
だから、おめぇはどこぞの鍵士の血筋なのかもしれねぇが、ハンターになることはお勧めしねぇぜ?
いやなことも多分たくさん経験することになるしな。
でも、何が起こるかわからねぇ今の世の中、何が起こっても大事なもんだけは守れるように、鍛錬だけは欠かすんじゃねぇぞ?
ああ、でもあったな、二度だけ、マジで死ぬなって思ったやつは。
一つ目は、、、俺の連れを拝み倒すために無茶した時だなぁ。あ?言ってなかったか?俺は、嫁さんもいるし、子供もいるんだぜ?
まぁ、もっとも、今はどこでどうしているのかわからんがなぁ。
あ゛?うっせぇよ、おとなにゃ色々あんだよ。
で、そのもう一つが、、、
今も追いかけ続けてる、ぶちころしてぇ奴らにはめられた時、、、だな。
~とある男の独白より~
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