第13話 漂着
…
…
…
なんだ?
体中がいてぇ。
さみぃ。
…
…
目を開けた俺が見たのは、暗い川べりだった。
あたりは暗く、砂利と川面に垂れる草だけが、静かにそこにあった。
しばらくぼーっとしていたが、下半身の浮遊感にどうやら半身が水の中にあるらしいことがわかった。
そら、さみぃ訳だ。
苦笑しながら体を自ら引き上げようとして、体の痛みに悲鳴を上げそうになった。
「っっっ、くっ、そっ、なんだって、、、」
そう毒づきつつ、痛みの原因を探る。
全身満遍なくいてぇのは確かだが、動くことは動く。
だが、右の肩、ここだけはどうやら外れちまっているらしく、動くにゃこいつを何とかするしかなさそうだ。
そう判断すると、傷む体を引きずりつつ、体を起こす。
そして、俺と一緒に打ち上げられたらしい道具カバン。
そこからはみ出ていたタスキを口に咥えつつ、左手で思いっきり腕を持ち上げる。
「っっっぐぅ」
ごきん、と嫌な音がして、どうやら肩は元の位置に戻ったようだ。
「はぁ、はぁ、はぁ、ってぇ。肩を自分ではめるなんて、親父のしごきを受けていた時以来だ。本当に最悪の気分だな。」
そう独り言ちつつ、カバンの中からポーションを探す。
打ち上げられるまでに相当の衝撃があったようで、ほとんどの瓶が割れてしまっていたが、何とか二本だけ、まともなものがあったのでうち一本を一息に飲み干す。
「っっくぅ、久々に飲むとまじぃもんだな。」
苦笑しつつ、空になった瓶を目線の高さで振りながら、そう独り言ちる。
と、ここまで来てやっと、自分の状況を思い出してきた。
「んのヤロウ。俺に劉河砲打ちやがっるたぁ、どういう了見だ!」
ふつふつと燃え滾る怒りをぶつける場がなく、思わず足元の地面を殴りつける。
「っっっっつぅ」
途端、全身に痛みが走る。
「ったく、俺は馬鹿か。ポーションっつったって限度があるわな。もう少し安静にしてねぇと馴染まんのはわかり切ったこっだろうが。」
そう毒づくと、その場に大の字に寝そべる。
そして、思考の海へと没する。
今はいつだ?
あれからどのくらいたった?
体の具合からして、半日は経っていねぇようだが。
ギンは何で俺を狙った?
どこまでがあいつ、いや、あいつらの企みだ?
何もわからねぇ。
わからねぇが、一つだけ言えるのは、ギン、まずはあいつをぶっ飛ばすってことだ。
すべてはそれから。
けど、情報がたりねぇ。
情報を得るためにもまずは村に戻って、村長に話を聞かねぇと。
って、ここはどこだ?
劉河は急峻だから、一気に別の土地まで持ってかれてる可能性もあるが、、、
色々と思考を巡らせながら、どのくらい横になっていただろうか?
大分体の痛みも抜けてきたような気がする。
俺はぱちりと目を開く。
その先には満天の星空。
それを目にしただけで、怒りの炎が少しなりを潜めたような気がする。
「っし、と、まずは現状を確認しねぇとな。」
そう自分に発破をかけつつ、起き上がる。
「体は動く。ポーションのお陰で、もう寒くも感じねぇ。濡れた服はほっときゃ乾くだろう。あとは、道具類だが、、、」
声に出しつつ、現状を確認していると、少し下流の方から、
「$)($’)%&$~~~!」
聞きなれた叫び声が。
俺は慌てて、無事だったもう一つのポーションを腰ベルトに下げると、一目散にこの場所を後にするのだった。
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ポーションってのはな、過信しちゃいけねぇんだ。
高級な奴は即効性がたけぇのもあったりはするが、基本的には人間自身の治ろうとする力を増幅するだけのもんだ。
だから、飲んでから体がその薬に馴染む、いや、逆か?
まぁ、どうでもいいが、要は使ってから効果が出るまで時間がかかるってことだ。
それに放っといても治らねぇ傷は、当然治らねぇ。
骨折して変な方向向いたまんまの骨とかな。
最悪そのままくっついちまって、もっと酷いことになったりするな。
だから、治せるところは自分で治して、ダメ押しでポーションを使うくらいの気持ちでいた方がいいんだ。
よぉく覚えときな。
ただ、宝具は別だ。
聖者の杖っつう宝具とかは、傷はたちどころに。
折れた骨は元通りに。
その上なくなった腕とかも生えてくるらしいぞ?
それに選ばれた奴を聖者だとか、聖女だとかいうらしいが、俺は会った事ねぇな。
まぁ、何はともあれ、薬は用法を守って使えってこったな。
それとな、気持ちよくなる薬とか、痛みがなくなる薬とか、いろいろ世の中には薬ってもんがあるが、そういうのには手を出さねぇ方がいいぞ?
当然、効果の代償があるからな。
ポーション?
ポーションの代償はな、腹が減るってことだな。
~とある男の独白より~
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