第8話 出立

 「おい、こっちだ。」


 ギンに誘われて、俺は小屋の裏手の森の中へ。

 すぐ裏かと思いきや、そんなこともなく、案内されるがままに、けもの道を歩くこと数分、急に森の開けた一角があった。

 が、そこには何もなく、、、


 「っここは…」


 「流石に、そんなほいほいとおいておけるもんでもねぇからな。」


 そういうが早いか、ギンは何もない虚空に手を伸ばす。

 と、パリン、と何かが割れるような音がして、空気が揺らいだかと思うと、そこには茣蓙に置かれた幾つもの道具が置かれていた。


 「こいつは、、キンの権能か?」


 「ああ、流石にそのままって訳にもいかんだろう?」


 「んな器用なことがあいつにできるなんて知らなかったもんで、驚いただけだ。さて、、」


 そう胡麻化しつつ、俺は道具類を改める。

 道具類はひどく汚れていたり、多少の傷はあったものの、概ね使用には問題なさそうに見えた。

 治癒の薬液や煙玉など、討伐の補助に必要そうなものは粗方そろっており、これらをそこにおいてあった使い込まれたバッグの中にいそいそと詰めていると、やおら、先ほどの続きとでもいう様にギンが話始めた。


 「まぁ、誰にだって隠し玉の一つや二つあるだろうさ。こと、ハンターなら、奥の手の数で生き死にが決まることだってある。見せ球の裏にちゃんと隠し玉を準備しろってのは、てめぇがパーティにいたときから俺らに事ある度にいってたこったろ?」


 「ああ、そうだな。おめぇらは聞いちゃいなかったから、そんなこともう忘れちまってるもんだと思ってたよ。」


 「俺らにだっていろいろあったのさ。さて、準備は大方できたってとこか?」


 「ああ、誰かさんが木にもたれかかって、偉そうに腕組みしながらくっちゃべってる間にな。」


 「へっ、そりゃ、悪うございました。」


 そういうと、ギンはと彼方の森の上空を見上げる。

 どうやらあそこが俺の戦場になるようだ。


 「気は進まねぇが、楽しいお散歩と洒落込みますかね。地図はある程度頭には入ってるが、、、とりあえず近場までの案内は任せていいんだよな?ギン?」


 「…ん?あ?ああ、そうだな。」

 

 どこか、心ここにあらずなギンの様子を訝しみつつ、俺たちは森の奥へと分け入っていくのだった。


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 権能か?


 権能はなぁ。一言でいうと、普通じゃない力だな。

 宝箱の奴が持ってる力を指すこともありゃ、宝具が持ってるものを指すこともある。

 どちらにしろ、異常な力だな。

 だが、宝箱と戦うためにゃ、それを見極めなきゃならねぇ。

 一番、ポピュラーなのが、不可視だな。

 見える触手をうまくさばいてたら、見えない触手に捕まれて、あの世行き、なんて笑い話にもなりゃしないが、有名な話だな。

 ただ、権能だって、万能じゃぁない。

 例えば、不可視だが、同時に見えなくできる数や範囲、自分との距離とか、まぁ色んな制約があるのが普通だな。

 そして、基本一つの宝箱には一つの権能だ。

 不可視ができる奴は、呪いはバラまけないってな具合にな。

 それは宝具にも言えるこったが。


 ただ、世の中には例外ってもんがありやがる。

 特に七大災厄って呼ばれているやつらは、二つ以上の権能を持っているっていわれているな。

 最早伝説みたいなもんだけどな。


~とある男の独白より~

  

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