第3話 悪友達

 「おい、どこにいくんだよ」


 しぶしぶ、ギンの後をついて歩く俺。

 てっきり村長の家にでも行くのかと思ったがそうではないらしい。


 「ああん?どこって仕事の話ができるところに決まってんじゃねぇかよ?」


 「それがどこかって聞いてんだ。村長のところでもねぇみてぇだし、このままじゃ森に入っちまう。チビにも嫁にもなんも言ってきてねぇし、準備だってしてねぇんだから、このまま森に入んのは無理だ。」


 「(っち、めんどくせぇ)」


 「あ?何か言ったか?」


 「言ってねぇよ。森の入り口の小屋にキンが待ってんだよ。」


 「あん?なんだって動けねぇキンがそんなとこに?村長はどうしたんだよ?」


 「村長の了解はとってんだ。キンは動けねぇながらも、監視ぐらいはできっからよ。」


 「ああ、そうか、キンの宝具は探知と防御に向いているんだったな。」


 「…ああ、そういうことだよ。」


 途中の会話に違和感を感じながらも、俺はギンと小屋を目指す。

 村から距離を取って建てられたその小屋は、森の中に狩りに行く際の道具や罠をしまっておく場所だった。


 小屋につくと、半ば体当たりのようにして、ギンが扉を開ける。

 

 ガンッ!ガンッ!ギ、ギギギ。

 

 壊れそうな音を立てながら扉が開く。

 外からの逆光で薄暗い小屋内はよく見えなかったが、金ぴかの趣味の悪い全身鎧に、黄金の大盾を持った赤髪の大男が座っているのがかろうじて見えた。

そのタイミングでギンが


 「オーっす、連れてきたぞ~」


 と間抜けな声をかける。

 すると、大男は、


 「…遅かったじゃねぇか」


 とうつむき加減のまま、大男は声を上げる。


 「わりぃわりぃ、元A級様の説得手間取っちまってよ。」


 そう悪びれもせず言うギンを無視し、


 「久しぶりだなぁ、サンゾウ。会いたかったぜぇ。」


 大男は不意に俺の方を見ていった。

 

 キンは獰猛な笑顔を見せていた。

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 箱の中身?


 そらぁ、金銀財宝が入ってたこともあるなぁ。

 見たこともない食料や薬だったこともある。

 でもなぁ、それよりなにより、すげぇのは極たまに宝具が入っていることがあるってことだな。


 宝具ってのはな、人の力が及ばない宝箱を傷つけることができる唯一の武器で、不思議な力を宿していることだってあるんだぜ?


 え?使ってみたい?

 無理無理。

 宝具は武器だが、意思を持っているといわれてんだ。

 だから、宝具が認めた人間しか持つことはできないし、力も発揮しない。

 ただ、認められりゃ、宝具の力も、自分の体も思いのままさ。

 そういうわけで、宝具に認められた人間、つまり宝具士ってのはすっごく貴重で、すっごく強いやつが多いって訳。

 普通は村に一人いれば英雄扱いなんだけど、どうしたわけか、俺の住んでた村にゃ3人もいたけどな。

 だからか、他の村々に出張で助けに行ったりもしてたなぁ。

 いきゃぁ英雄扱いなんだから、いい気なもんだったろうさ。


 そう、俺も思っていたよ。


~とある男の独白より~

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