第九話 祝福
「参ったな……」
父が家を訪れた翌日。リビングのソファに腰掛け、和弘から預かった品々の整理をしていた僕は忽然とそんなことを呟く。
時刻は二十一時過ぎ。既に父は赴任先へと戻り、理亜は自室へと戻っている。よって、僕の漏らした呟きに返る声は無い。
逆にそうと知っていたから口にしたというのが本当のところなのだが……。
口を継いで出そうになった溜め息を噛み殺しつつ、ソファの前に配置された洒落た木製のローテーブルへと目をやる。
卓上に並ぶのは和弘が帰省に伴って家に置いていった品々だ。
――お土産関係はとりあえず置いとくとして、こっちはどうしようかな……。
和弘が海外を回った際に集めてきたらしいお土産の数々は一旦捨て置き、問題のそれに目を向ける。
視線の先には業務書類のようにも見える紙束。それらは父が理亜を引き取る際に交わした公約などを詳細に記載したものだ。
もちろん僕が中身を読んでも中身なんてちっとも理解出来ないし、大切に保管していれば問題は無い。
僕が問題視しているのは紙束ではなく、それと共に置かれている小さなカードの方である。
手続きが完了したからと和弘に渡されたそれ。
定期券やポイントカードなどの一般的なカードと同じ大きさで、理亜の名前や性別、生年月日などが記載されている。
そう、理亜の健康保険証だ。
たかが健康保険証と言われればその通り。直近でこれを使ってどうこうする訳では無いし、保険証自体に問題は無い。
再度記載内容に目を通し、溜め息を一つ。生年月日……特に月日の部分を見て眉を寄せる。
記載されている数字は十月十日。三日後だった。
「もうすぐじゃないか……」
もっと早く理亜に誕生日を聞いておけばよかったと後悔した。
そうすれば準備をする時間にも余裕を持てていただろう。こうも急ではどうすべきかを考える時間もない。
普通こういう時はすぐにでも理亜に欲しいものを聞いて用意すべきなのだろうが、他人の施しを受けたがらない理亜のことだ。それを聞いたところで、いい返答が無いことは目に見えている。
故に残された選択肢は一つしかない。
――サプライズなんて、柄じゃないんだけどな。
そんなことを思いつつ、僕は頭を抱えるのだった。
「なぁ琉晟」
次の日。午前の授業が終わり、昼休みに入った頃合を見計らって僕は琉晟に声を掛けた。
昨日から理亜の誕生日に何を渡すか考えてはみたものの、良い案が思い浮かぶわけもなく、結果他人の考えに縋ろうというわけである。
正直苦肉の策ではあるのだが、琉晟は僕とは違い女子との交流があるし、歳の近い妹もいる。
彼女がいるという話は聞かないが、少なくとも僕よりは女心が分かっているだろうという予想だ。
「妹の誕生日、いつもどんなものを渡してるんだ?」
「どうしたよ?急に」
「別に、ただの興味本位」
「え、路惟が女の子にプレゼントを……?」
琉晟の瞳が驚愕に見開かれていくのを見て溜め息を一つ。
彼の解釈は間違ってはいないが、理亜は別に彼女とかでは無いし、今回のサプライズで振り向かせようなどという魂胆は微塵も無い。
ただ知ってしまったから、誕生日を知っていながらそれを無視するのは僕が自分を許せなくなりそうだから渡すというだけだ。
「笑うなよ。似合わないことくらい分かっているさ」
「お前、まじか?! 彼女?」
「悪いが、君が期待しているような間柄じゃない。ただの知り合いだよ。今度誕生日だから参考程度に聞いておこうと思ってね」
ほーん、と聞き流すような返事を寄越した琉晟。
これは信じてもらえていないやつだなと嘆息し、やはり相談すべきではなかったと若干の後悔する。
ただ、こちらとしても急を要する事態なので多少の勘違いは受け入れるしかないだろう。
「そりゃあ欲しがってるものを渡すのが一番だろうよ。
「そういうことをするような子じゃないな。欲しいもの、分からなければどうする?」
「そうだなー。やっぱ仲の良さによるな。仲良いならアクセサリーとかで攻めていいと思うし、そうじゃないなら雑貨とか消え物が無難じゃね?」
思わず眉を上げる。
正直なところ、ここまでまともな返答が帰ってくるとは思っても見なかった。
琉晟の回答はその手の話に疎い僕が聞いても的確に的を射ていると分かるもので、思わず感心してしまったほどだ。
歳の近い妹がいるだけでこうも的確な回答ができるものなのかと思うが、女心が分かるというのはやはり大きなアドバンテージのようだ。
「なんだよ。人のことじっと見て」
「いいや、あまりに詳しいから少し引いてただけ」
「おい?! お前が聞いてきたんだろうが」
軽く背中を叩かれるが軽く笑っているあたり冗談だということは分かっているらしい。
琉晟のツッコミを笑って流しつつ、あとでお礼に飲み物でも奢ってやろうと心に決めた。
「ありがとう琉晟、とても参考になったよ」
「ふん。ネタででかいぬいぐるみでもあげとけ」
「急にまともじゃなくなったな」
「ワンチャンスだぞ? 遊び心あった方が気に入られるかもしれん」
「別に気に入られたいとかはないよ」
いらぬ勘違いを払拭すべく答えれば、琉晟は「素直じゃない奴め」と愉快そうに笑うのみ。
ひっそりと溜め息を吐きつつ、早々に誤解を解くのは諦める。
「まあ、俺も女じゃないからなー。迷うんなら異性に聞いてみるのが一番だろうよ」
「それ、僕に女子の知り合いが居ないことを知ってて言ってるのか?」
「おっと、バレたか」
少しばかり肩を竦めおどけてみせる琉晟。僕はただ苦笑いを返す他なかった。
誰もが簡単に女子と楽しく話したり、彼女を作ったりできる訳では無い。もし全ての人がそうできるのであれば、世の中の多くの男子は泣いていないだろう。
尤も、僕にはそんなことをする気力も、資格も、ありはしないのだが……。
「で、女の子の友達いないからって私に聞きに来たわけ?」
はぁ、とわざとらしく溜め息を吐きながら呆れたように文乃に言われ、僕は思わず両の瞳を瞬く。
琉晟から「異性に聞くのが一番」と言われたのを鵜呑みにし、放課後に文乃の営む美容院へ行って相談したのはいいが、これは想定外の反応だった。
元から前髪を整えてもらうために美容院へ行く用事があったし、都合がいいと思ったのだが、自分本位が過ぎただろうか。
「そうだけど、まずかった?」
「年の差を考えなさいよ。若い子が好きなものなんて知らないわよ?」
「文姉は十分若いよ。それに、もし女子の知り合いがいたとしても文姉を頼ったさ。信頼してるし、頼りにもしてる」
「そういうことは私にじゃなく女の子相手に言いなさいな。きっとときめくわよ?」
「はは、それはないな。……絶対に」
「路惟ちゃんねぇ……。まぁいいわ」
もう一度、今度は深々とため息をついた文乃。どうやら相談を受けてくれる気にはなってくれたらしい。
幼い頃から無茶を言っては迷惑をかけたものだが、なんだかんだ言って最終的には味方をしてくれる彼女には感謝の念が尽きない。
今回のような相談事は数しれず、いない母親の代わりに授業参観に来てもらったり、父の出張中には泊まり込みで面倒を見てくれたりと色々と世話を妬いてもらった。
当然それらは僕の中で絶対的な信頼を勝ち得る理由になっているが、かなりの美人と評判の文乃が今でも未婚でいるのは僕が彼女の大事な時期を邪魔したからではないかと罪悪感を感じることもある。
「それなりに話す女の子にあげるプレゼントっていう話ならお友達の考えは良いわね。仮に私が受け取る側だったとして、消耗品とかなら重すぎないし、受け取りやすいと思うもの」
「なるほどね」
「でも、理亜ちゃんに渡すなら別にそれに囚われなくてもいいんじゃないかしら。同じ家に住んでるんだし、兄妹みたいなものでしょう? 家族に渡すプレゼントと同じように考えていいと思うわ」
言われて僕は考え込む。
確かに文乃の考えは一理ある。それは認めるところなのだが、いったい何を渡していいものか。
理亜が来るまで僕は一人っ子だったわけで、兄妹にプレゼントを渡すという経験はした事がない。
いったいどういうものを渡すのが良いのか、見当もつかなかった。
「あら、困ってる顔しちゃって、可愛いわね」
「茶化すなよ。困ってるんだ。そういえば、文姉は父さんからもらって嬉しかったものはあるの?」
「んー? そうねー」
唇に人差し指をあてがって文乃はしばしの間思考する。
それからふと思い出したかのように口を開いた。
「……ぬいぐるみ」
「ぬいぐるみ?」
「ああ、うん。もうずっと前のことだけどね。兄さんからもらった名前も知らないキャラのぬいぐるみ、ずっと持ってた記憶があるわ。今もどこかにあるんじゃないかしら」
「ぬいぐるみ、か……」
「女の子は可愛いものが好きなのよ。ぬいぐるみとかマスコット、大人になっても大事に持ってる人はいるし、候補としてはありなんじゃない?」
言われて僕は「そういうものか」と頷きを返す。
理亜が少女趣味かどうかはさておき、思い返してみれば彼女は玩具らしいものを何一つ持っていないような気がする。
彼女の部屋にあるのはベッドと小さなテーブル、それに文乃から渡されたであろうコスメのボトルがいくつかあるくらいのもので、立ち入る度に寂しさを覚えるほどだ。
部屋を飾るものがなにか一つくらいあってもいいだろうか。
「ありがとう文ねぇ、助かったよ」
「どういたしまして。なんであれ路惟ちゃんが一生懸命選んだものならきっと喜んでくれるわよ」
「そうだね。あとは僕なりになんとか選んでみるさ」
満面の笑みでこちらを気遣ってくる文乃に微笑みを返しつつ、僕はそっと財布に入った自分の予算を思い浮かべた。
そして理亜の誕生日当日。
いつも通より少し軽めに夕食を済ませた僕は、洗い物を片付けるべく食器を回収してキッチンへと引っ込む。
理亜の方はというと僕が食後にリビングで待つよう言ったこともあり、ソファの隅にちょこんと腰掛けていた。
案の定というか、誕生日のはずの本人はそれは全く意識してないようで、麦茶の入ったグラスを傾けては喉を小さくこくんと鳴らすのみだ。
僕は一度おもむろに冷蔵庫の扉を開け、収納された白い紙箱を眺めては小さなため息を一つ。
紙箱に入っているのはもちろんケーキだ。少し気合いの入れすぎかとも思ったのだが、やはり誕生日はこれがなければ始まるまい。
ちらりともう一度理亜の方を見やる。無表情のまま何も無い壁を見ているのは相変わらずで、自らの誕生日など頭に無いような様子。
こうもいつも通りの対応をされてはケーキもプレゼントもどのタイミングで渡せば良いか検討もつかない。
これでは少しそわそわしてくれていたりした方が楽だったかもしれないなと思いつつ、紙箱を取り出して僕は冷蔵庫の扉を閉める。
「理亜、お腹はもういっぱいかい?」
「……?」
あからさまに首傾げる理亜。
我ながら怪しい聞き方すぎるなと苦笑する。
「まだ、食べれる」
「それは良かった」
「……どうして?」
「実はこういうものがあってね」
白い陶器製の皿をソファの前のローテーブルに置き、銀のフルーツフォークを添える。
皿に乗っているのはカットされたフルーツタルトだ。
僕がよくコーヒーと共に嗜む菓子を買いに寄るケーキ屋で買ってきたもので、店の看板商品にもなっている代物。
ちなみにケーキでなくタルトなのは完全に僕の趣味である。
「お菓子……?」
「うん。理亜は今日が誕生日だろう?」
「……どうして、知ってるの?」
「ああ、いや。父さんから君の保険証を預かってね。それを見て知ったんだ」
続けて勝手に彼女の保険証を見たことを謝れば、「別にいい」といつも通りの淡白な返事が帰ってくる。
「誕生日は、お菓子を食べるの?」
「……そうさ。誕生日は特別な日だから、特別なものを食べてお祝いする。悪くないだろ?」
「そう……」
「それからこういうものもある」
空いている理亜の隣りに腰を下ろし、ソファの影に隠していた不織布製の袋に包まれたものを取り出す。
隠していたとは言ってもかなりの大きさの物なので、とうに見つかってはいただろうが……。
「誕生日プレゼントって知ってるかい? もし知っているなら、これを君に贈ろう。誕生日おめでとう」
「……。」
ぴったりと揃えられた理亜の細い太ももの上にそれを載せれば若干困惑の混じった眼差しで彼女がこちらを見てくるのが分かる。
やがて束の間の沈黙を破り彼女が放った言葉は僕の想像通りのものだった。
「いらない」
「お返しを気にしているなら、その必要はないよ。別に僕が好きでやっているだけだ。どうしてもというなら次の僕の誕生日に期待をしておくが」
「……いらない」
「それは参ったな。選ぶのに大分苦労したんだけど?」
彼女の瞳を覗き込むように見れば、澄んだ濃紺の瞳が居場所を無くしたかのように逸らされる。
「受け取らないというならそれでも構わない。ただ、理由くらいは聞かせて欲しいな」
「……私の誕生日に祝う価値なんてないもの」
「なぜ?」
「誕生日は、生まれてきたことを祝うんでしょう? だったらそれは、私には必要ない」
だって、と続けて言葉を紡ぐ理亜の声は酷く冷たい。
素っ気ないのはいつもの事だが、どこか突き放すような声音は久々だ。
まるで彼女と出会って間もない頃に時間が戻ってしまったような、そんな感覚さえ覚える。
「だって私は、生まれて来なければ良かった子供だから……」
ちらりとこちらに向けられる濃紺の瞳。酷く虚ろなそれは誕生日という言葉自体にどこか忌避感を抱いているような、そんな眼差しで。
なるほど、と思った。
最近ようやくこちらの用意するものを素直に受け取ってくれるようになってきた理亜。
そんな彼女が今回の贈り物を頑なに受け取ろうとしないのは、受け取ったものを返せないからではない。
どこかで吹き込まれたのか、あるいは自分でそう判断したのか、理亜は自分が生まれてきてはいけない存在だと思っているのだろう。
故に誕生日に生まれてきたことを祝福するのは無意味だと、そう言っているのだ。
「君、本当にそう思っているのかい?」
「……私を家に置く人はみんなそう言う。だから、きっとそう」
僕は密かに息を飲む。
一体どんな扱いを受けてきたら、ここまで自分を否定することができるようになるのだろう。
もちろん、理亜が僕の思う普通の家庭で育っていないというのは重々承知しているつもりだが、改めて聞くとやはり彼女を預かって育ててきたという者達への苛立ちを覚えずにはいられない。
「そういう考え方、僕は嫌いだな」
「嫌い……?」
「生まれて来なければ良かったから誕生日を祝う価値がないなんて、それじゃあいつまでも君が慰めらない。別にいいだろ、君が生まれて、ここまで生きてきたことを祝うくらい」
「……」
「それくらいの権利、きっと誰だって持ってる。例外なく、全ての人がね」
理亜の考えを真っ向から否定する言い方は出来ればしたくなかったが、僕にも譲れない考え方というものはある。
この世に生まれ、今まで生きてきたことは誰もが祝福されるべきだ。それが認められない世界などあってたまるものか。
僕は躊躇わずに少しだけプレゼントの入った袋を理亜の方へと押し出す。
「受け取りなよ」
「でも……」
「今日は他の誰でもない。君の誕生日だ」
困った様子の理亜は一瞬たじろいだ後に、少しだけ眉尻を下げてそれを受け取る。
その視線が袋で包装されたものに向くまでそう時間はかからなかった。
「……開けてもいい?」
「もちろん」
頷くと、理亜はおずおずと袋の封をしていたリボンをほどく。
なんというか、贈り物を目の前でゆっくりと開けられるというのは、少しだけ緊張した。
やがて中身を取り出し両手で持ち上げた理亜は、意外そうにその瞳を瞬かせる。
ついでに言うとほんの少しだけ首を傾げているようにも見えた。
「さめ……?」
理亜が呟いたのは、
淡いブルーグレーの胴体に、つぶらな瞳のかなりディフォルメされたサメのぬいぐるみ。
ちなみに琉晟の「でかいぬいぐるみでもあげとけ」というアドバイスのもと一番大きいものを選んできたので大きさはかなりある。
低学年の小学生の身長くらいはあるかというサイズ感だ。
正直高校生にもなってぬいぐるみかとは少し思うが、文乃も「大人になっても持ってる人はいる」と言っていたし、散々考えた果にこれを選択したので後悔はしていない。
「……大きいね」
「その、遊び心というか、インパクトはあった方がいいと思って……」
言い訳するでもなく呟いて、苦笑する。
こういうのは得意ではなかった。
そもそも異性にプレゼントをするなんて文乃に送る時くらいのもので、その他はまるで経験がないし、することになるとも思っていなかったのだ。
さすがにこの大きさはやりすぎたかと、理亜の様子を窺えば、彼女はじっとサメのぬいぐるみを見つめていた。
表情は喜びに笑むわけでもなく、不満に歪むわけでもない。ただひたすらにサメを眺めている。
「まぁ、僕はそれを渡せただけで満足さ。あとは君の好きにしてもらって構わない。気に入らなければ捨ててくれ」
所詮はよく知りもしない男からのプレゼント、今後どのような扱いを受けようと文句は言えまい。
そもそも、誕生日を知らない振りで流すのが嫌だったから、僕自身が渡して満足感を得るためだけに用意した物だ。
理亜が今後それをどうしようが興味は無い。使うも捨てるも彼女の自由だ。
「……そんなこと、しないよ」
やがてぽつりと理亜はそんなことを呟いた。
いつも通り抑揚は控えめな声音。けれどそれには揺らがぬ意志を感じさせる芯があるような気がした。
「私、これは捨てたくない。貴方が、くれたものだから……」
理亜の細い腕が包み込むようにぬいぐるみを抱きしめる。
その様子はまるでお気に入りの玩具を取られまいとする幼子のよう。
もしかすると彼女なりにプレゼントを喜んでくれているのだろうか。そうであればよいなと心の内で密かに思う。
「路惟、ありがとう」
その瞬間、あまりの衝撃に思わず両の瞳を見開く。
感謝の言葉を口にした理亜の表情は普段の無表情とは少しばかり違った。
最近手入れのされている艶やかな薄紅の唇。その両端がほんの僅かに上に上がっている。
出会ってすぐの僕ならばならばこんなもの当然のように見逃していたであろう、ほんの僅かな表情の変化。けれどその瞬間、彼女は確かに微笑んでいた。
穏やかで柔らかく、どこか慈しむような笑み。思わず見惚れてしまったのは言うまでもない。
――笑っ……た?
思わず口をついで出そうになった驚嘆の言葉を、慌てて飲み込む。
その瞬間には既に理亜の表情は元通りに戻っていて、僕は名残惜しさに負けて目を伏せた。
「そんなに喜んで貰えたなら、僕も報われるな」
あまりの驚きを処理するのに時間を要した僕は、暫しの沈黙の後にようやくそんな言葉を返すのだった。
【あとがきっぽい何か】
お読みいただきありがとうございます。
実は文乃と和弘の歳は十歳ほど離れています。文乃は若いうちから路惟と遊んでいたので、路惟にとっては姉のような存在として写っているようですね。
さて、理亜は今回のプレゼントをとても気に入ったようですが、彼女がその後ぬいぐるみを抱いて寝たかどうかは読者の皆さんの想像力に任せするとします。
※途中出てきた凛というのは琉晟くんの妹です。
家族を妹呼びするのも変だなと思い、名前のみ出しました。今後登場するかは未定です。
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