契約
私から見ても、奈津の状態はあまり良くないように見えた。まるで自分勝手な願いだけど、彼女が唐突に発した恋愛への憧れに、思いを成就する一抹の希望を見出してしまった。
「別に、ここで恋愛をすることだってできるじゃない?」
身勝手さを悟られないようにと、あえて遠回りに仄めかしてみる。
「誰と?ここにはわたしと友子さんしかいないでしょ?」
その通り、想像通りの反応だ。
「そうなんだけど、奈津もこの前貸した本で読んだでしょ、女の子同士の恋愛もあるんだって。」
奈津は少し笑って言った。
「それって、わたしと付き合いたいっていう、遠回しな告白?もしかして、この前貸してくれた『エス』の小説も、わたしの反応を窺うためだったの?」
私の意図は気づかれてしまったようだった。私は少し焦ってしまっただろうかと後悔しながらごまかそうとする。
「私は奈津のことが好きだし、もし奈津がどうしても恋愛がしたいなら、そういうのもアリじゃない?って、思って。もちろん、ここにいる間だけね。」
すごく言い訳がましい言い方をしてしまった。奈津は少し黙って考え込んでから、また口を開いた。
「確かに、ここから出られるか分からないし、正直いつまで生きていられるかも分からない。もし友子さんがよければ、恋人になってほしい。」
私はまるで夢を見ているかのように嬉しかった。憧れの人と恋人同士になれるなんて、こんなに幸せなことはない。
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