第1話 こんにちは異世界!8

 目の前にいたあの巨大なドラゴンが、この美女だって?冗談じゃない。これでは俺の冒険に支障が出ちまう。


「ふふん、どうだ!私にかかれば人の子の姿になるなんて造作もないことよ!」

「待て、それ以上近づくんじゃあないっ!」

「ん?どうしたんだ?そんなに慌てて・・・。まさか、メグル―――!!」


 そう、俺こと天音巡は――――


「ドラゴンの姿の方が良かったのか?」

「いや、それはない。今の方が絶対にいい」

「メ、メグルぅ~~」


 人間フォームを褒められてよほど嬉しいのか、ドラ子が左腕に抱き着いてきた。

 ド密着だ。

 たわわが!たわわがぁ!!


「え、えぇい!!離れんか!!」

「どうしたのだメグルよ!冷たいではないか!」


 更にぎゅっと力を込めるドラ子。

 さすがドラゴンと言うべきか。全く振りほどくことが出来ない。ていうか力強すぎる。左腕の感覚がなくなってきた。これ血止まってない?なんか見たことないくらい白いんだけど。


「左腕見てくれ、な!?真っ白になってる!血が止まってる!」

「あ、本当だ。すまない」


 真っ白の腕を見て、パッと離れた。

 危なかった。

 これ以上抱き着かれていれば、俺の左腕は無くなっていただろう。


「人間の姿をしているとは言えお前はドラゴンなんだから・・・気を付けてくれ」

「うーむ、この姿なら本来の十分の一しか力を発揮できないのだがなぁ」


 は?

 これで十分の一?

 本来のドラゴン状態だとどれだけヤバいんだよ。

 マジで助かった。いや、この姿でも全然勝てそうにもないんだけどね。


「まぁとにかく今後は無暗に抱き着かないように。わかったか?」

「うむ、心得たぞ。して、メグルどうだ?私、可愛いか?」


 ぐっ・・・!コイツ、自分が可愛いのを解っている!天然チョロメンヘラみたいな性格なのに!!

 上目遣いで俺を見るな。

 そう、俺はこと天音巡は『美女』が大の苦手なんだ!


「ま、まぁ可愛いんじゃない?」


 しまった、咄嗟に口が動いちまった!考える前に口が勝手に!

 俺としたことが!!このお人好し!!


「メ、メグルぅ~~」


 ドラ子が今度は右腕にぎゅっと抱き着いてきた。

 いや、この流れさっきやったから。

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