第1話 こんにちは異世界!6

 案外チョロいことが分かったならこちらに分がある。なんとかこの現状を打破しないと死or結納だ!


「いやいや謝ることはない。そもそも、お互いの名前も知らないじゃないか。やっぱりそれは良くないと思うな!」


 できるだけ優しく声をかけることによって親しみやすさアップだ。


「ふむ、そうか。そういえば名乗っていなかったな!」

「そうだろう?まずは自己紹介からだ。俺は、天音巡あまねめぐる。ご存じの通り『異世界転生者』だ。さっきこの世界にきたばっかりだ。よろしくな」

「アマネメグル。わかった、メグル!」


 嬉しそうにメグル、メグルとぼそぼそ呟いている。

 時折聞こえる、我が夫メグルと聞こえているのは無視だ。


「ほら、お前の名前はなんて言うんだ?教えてくれ」

「失礼した!私の名前は―――ドラグオン・ルイ・ヴォングレイ・アルセス=クライヴィッヒ・パレスター・ミラ・アーヴァン・マクスウェル・アロマ・ティア・ドラグーンだ!」

「あーもう一回言ってくれ」

「ドラグオン・ルイ・ヴォングレイ・アルセス=クライヴィッヒ・パレスター・ミラ・アーヴァン・マクスウェル・アロマティア・ドラグーンだ!よろしく頼むメグル!」


 名前長すぎだろ。

 なにこれ?これが普通なの?この世界においてこれが普通だとすれば記憶力半端ないな。それともあれか、コイツがドラゴンだからこんなに長いのか?どっちにしろ俺には覚える自信が無い。


「あー、で何と呼べば?」

「ドラゴン、我が一族は皆フルネームで呼ぶ風習があるな」

「そうか、今日から君は『ドラ子』だ」

「ド、ドラ子・・・?」


 仮に名前を覚えたとして、さすがに一回一回呼ぶのは長すぎるぞ。


「メグル?その『ドラ子』というのは私の名前か?」

「そうだ」

「我が両親から貰った偉大な名前を愚弄する気か?」


 グルルゥと喉をならし睨みつけてくる。

 これは・・・怒ってますね。

 どうやら、一族的に名前はフルネームで呼ばないといけないらしい。


「俺の国では親しいやつに親しみを込めてニックネームで呼ぶんだ」

「親しい・・・やつ・・・?」


 それっぽいことを言って回避するしかない。


「そうだ。まさにピッタリだろ?俺たちの出会いには・・・さ」


 自分で言っといてなんだが、めちゃくちゃ臭い台詞を吐いた気がする。


「そうなのか・・・。ふふふ、それは良いな。私とメグルだけの・・・呼び方・・・ふふふ・・・」


 もしかして俺は今、地雷原でタップダンスしている状況かもしれない。

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