第1話 こんにちは異世界!4
急にドラゴンが大きな声を上げてわんわん泣き始めた。その両目からは大粒の涙をこぼしている。ガチ泣きだ。
さすがの俺もこれには困惑する。俺がいったい何をしたって言うんだよ。
というかドラゴンも泣くんだな。びっくりだよ。
「うわぁああん!!ぐおぉぉぉん!!」
うるせぇ!めちゃくちゃ泣いてんな!
さすがに俺のせい?と言えども、気の毒になってきた。
「おいドラゴン、なんでそんなに泣いてんだ」
「ううぅ・・・。人の子、お前・・・なぜ私が泣いているか、真に理由がわからないのか?」
「こちとら、さっきこの世界に来たばかりでよ。急に目の前にドラゴンが現れるわ、ガチ泣きされるわで困惑してるんだよ」
「なに?先刻こちらの『世界』に来たばかりだと?人の子、お前『転生者』か?」
涙を両翼で拭いて質問してきた。
転生者の存在を知っているだと。俺以外にも転生してきた奴がいるってことか。それなら話は早い。
「そうだ。俺は日本という国から来た転生者だ」
「ニホンがどこかは分からないが・・・そうだったか。すなない、少し取り乱してしまった」
あれで少しなの?空気振動するくらい泣いてたけど。こちとら耳がグワングワンするくらい泣いてたけど。
「それならば・・・『龍の掟』を知らなくても仕方がないな」
龍の掟?一体何だろうか。その掟が関係して泣いてたって訳か?
「ふんっ!仕方あるまい、この私が一から説明してやろう!」
「おぉ!それは頼もしいな。話の分かるドラゴンだ!」
「ふふん、そうだろう!そうだろう!」
ひとまずこれで俺の命が終わることが回避されたはずだ。
いやぁ、話してみるもんだな。人は見かけによらないとはよく言ったもんだ。まぁ人じゃないんだけど。
「『龍の掟』とは、ドラゴンに立ち向かった者に対し最大限の褒美を与える事を指すのだ。そもそも、我々はこの世界において強大な力で忌み嫌われるもの。言わば天災に近しい存在なのだ。無論、人の子が制御できるものでもない。しかしだな、勇気を持ってして立ち向かったものにはそのドラゴンから褒美が与えられる。その褒美は各々が掟の中で決めている」
なるほど、それが『龍の掟』ってやつか。そりゃあこんだけデッカイ生き物に挑むんだ。天災ってのも頷ける。ちょっと泣くだけでアレだし。
だとすると俺はいつこのドラゴンに立ち向かったんだ?勝手に委縮してただけなんだけど。
「その『龍の掟』というの分かった。んで、その褒美とやらは俺は貰えるのか?」
「もちろん、人の子よ。お前は私に立ち向かった稀有な存在だ。しかも、この世界に転生して幾ばくもない時間の中でな」
ラッキーとでも言うべきか。いや、これをラッキーとして何を幸運と呼ぶ!
このドラゴンの褒美内容次第だが、最強の装備とか金銀財宝とかくれると今後助かる!
「して、その褒美の内容を聞いても・・・?」
恐る恐る聞いてみる。ここでがっついて機嫌を損なわれても困るからな。
「私だ」
「へ?」
「いや、私だ」
ダメだ。さっきの泣き声でまだ耳がイカれてる。大丈夫か俺の耳。
「む?聞こえて無かったか?褒美は私自身だ、夫よ。キャッ!」
小声で、言っちゃった言っちゃったとブツブツ言っているドラゴンを横目に俺は呆然としていた。
褒美はまさかの結納だった。
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