第22話

 再びの週末、日曜日。

 田宮家の応接には、小さい身体をより小さくする陽介の姿があった。


 思い立って、大学に向かったのは1週間前。

 必要な物をスーツケースに放り込みつつ、専門の研究室で研究を続ける友人にアポを取る。

 陽介にしてみれば、気になることを解消するためのいつもの行動。

 調べるなら融通が利く、使い慣れた研究室がいいし、人に任せるよりも直接自分が行った方が時間がかからなくていい、そんな程度のつもりだったのだ。

 資料を探すなら使い慣れた図書館だよね、そんなぐらいの感覚で、いまだ籍は置いたままの母校へと向かったに過ぎなかったのだった。


 まさか、日本で大騒ぎになってるとも思わず、父からの電話でも、(そういや何にも言わないで来たっけ?けど危ないことするわけじゃなし、寮とはいえ一人暮らしなんだから誰にも迷惑はかからないはず)と勝手に解釈。とくに連絡をするでもなく、そんな時間があるなら早く帰るためにもさっさとやることをやった方がいいと、友人とともにいろいろ調べ物を行った。


 とはいえ、心配かけたらしいことで父からも母からも小言はもらった陽介。せめてもの詫びを言おうと、寮にも戻らず、空港から直接田宮家へとやってきたのだ。そこで挨拶だけのつもりが、あやめがそのまま応接へ強制送還。

 いかにみんなが心配していたか、等々、延々を言い聞かせている最中、というわけだ。

 もっとも、あやめや陽介はは云々、と話してはいるが、未成年者が家族に黙って国を渡るなど、アメリカでだって常識ではない。むしろ、未成年保護の観念が強いアメリカのこと。日本よりも一層問題視されてもおかしくないのだ、という常識は、残念ながら二人は持ち合わせていなかった、ということは付け加えるべきであろう。



 そんなこんなで、あやめの説教が小一時間は続いただろうか。

 彼女の両親の取りなしもあって、その日は泊まることを条件に陽介はやっと解放される。


 そして夕食後。

 あやめは陽介に、この一週間で集めた情報を陽介に開示するのだった。

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