第15話
その後、共有スペースの方に戻り、部長に呼ばれた西園寺が現れた。
映像の話をし、陽介達に一瞥をくれたが、すぐに席を辞して自分の部屋へと戻ったようだ。どうやら、USBにデータをコピーしてくれるらしく、陽介は編集前の物を、と、声をかけた。
「一応、部内でも風呂場で発見されたというのは内緒になってるんだ。」
テーブルについた陽介たちに部長が小声で話しかけた。
「裸で発見された、というのは、さすがに故人に気の毒だしね。警察の現場検証の手前、そこに呼び出された者以外には秘密にしているんだ。」
「じゃあ、どこで発見されたことに?」
「ベッドさ。寝ていて亡くなった、ってことにしてる。だから、ほとんどの部員は急性アルコール中毒だろうと思ってるんだ。」
「なるほど。ところで、本当の発見場所を知っている人はどのくらいいますか。ていうか誰です?」
「僕と品川。警察に電話をしたのは西園寺だ。第一発見者が彼でね。」
「え?男性、ですよね。」
「そうなんだが、彼はついで、というか、付き合わされた感じだな。もう一人の発見者が須東だ。先生は風呂にはうるさかったからね。いったん寝たとしても、あとで風呂に入りたがるだろうから、と、時間をおいて入れに行ったらしい。そのときにまだ先生が寝てるなら、寝顔ドッキリをしかけようっていうので、西園寺を連れて行ったんだ。カメラマンとして、ね。」
「それでベッドにいなかったからお風呂を覗いて見つけた、ってことですか?」
「みたいだね。僕も後で聞いただけだから詳しくは分からないが。」
そこまで話したところで、西園寺が戻ってきた。
「探偵ごっこのつもりか知らないが、単なる事故だよ。ほれ、そのときの映像も入ってる。それ見りゃ分かるだろ。」
そう言うと西園寺は、ポンと小さなUSBメモリを陽介に投げる。
反射的にそれを受け取り、どうも、と小さくつぶやくのを見たかどうか、そのまま、西園寺は背を向けて立ち去った。
「ハハハ。愛想のない奴ですまないねぇ。けど、君たちもデリカシーのないことを言ってたからお互い様、かな。僕としては、演劇部とのコラボがうまくいけばそれでいい。あんまり傷をいじらず、脚本を待ってほしいんだけど。」
「それは、申し訳ありません。私としても脚本は楽しみです。それに急いでもらって申し訳ないけどありがたいです。ただ、友達の死の原因なんかも気になっちゃって。なんていうか、実感がないから。」
「そうだね。僕も実感ないよ。だからさ、弔いのためにもいい作品をともに創ろうじゃないか。ね、田宮姉弟!」
「いや、僕は・・・」
「ハハハ、まだ入部はしてない、だったか?だがうちの連中、君を想定して話を書いてるの多そうだしなぁ。早く決断してくれればと思うよ。」
「・・・」
陽介は苦笑し、あやめは微笑んだ。
あまり邪魔をしては、などと言いつつ、二人は合宿所を後にしたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます