第19話 救世主、ハーレムを築く
結局、収集つかなくなり柏木さんと連絡先を交換した。
「やりぃ! これで友達だね! ねぇ御幸くんって呼んでいい? あたしのことサヤでいいから」
「うん……わかったよ、サヤ」
最初は警戒していたけど、なんか不思議な子だ。
人柄もあり、緊張が解けて言葉も詰まらせず話せるようになった。
ついゴリ押しペースに流されてしまうけどね。
サヤは気を良くして「んじゃ、これから四人でランチしよ?」と誘ってくる。
別にいいけど、これだけ華やかな面々ばかりだ。
教室や食堂では目立って仕方ないので、天気も良いということもあり屋上で食べることになった。
普段は施錠がされている場所でも、アリアが頼めば教師からは何も問われることなく、あっさりと鍵を貸してくれる。
ここでもDUN機関の力が働いていると思われた。
そして屋上にて、美少女達と昼食ランチを楽しむ。
「……ごめんね、西埜。私までのこのこついて来て」
「いいよ、琴石。流れというか……こっちこそ巻き込んでしまってごめんよ」
「ううん、やっぱり優しいね。ねぇ前のように名前で呼んでくれない?」
「ああ、莉穂。俺も名前でいいから」
「うん、御幸……えへへへ」
久しぶりに名前で呼び合い嬉しそうに微笑む、莉穂。
彼女とは幼稚園から小学生の低学年まで仲が良かった。
そういう意味では幼馴染と言える間柄だ。
けど親父が事業を失敗し多額の借金を抱えたことと母親が蒸発したことが原因で、俺は塞ぎ込んでしまった。
したがって俺の方から疎遠となったわけで、莉穂は何も悪くない。
だから、またこうして距離が縮められて嬉しいと思えた。
「幼馴染か……ちょっとだけ厄介かもね。そう思わない、アリアちゃん?」
サヤはサンドイッチを口にしながら、俺と莉穂のやり取りを見つめている。
ぱっと見は笑顔っぽいけど瞳の奥は笑っていない気がした。
「そうか? 私にも幼馴染がいる。別に可笑しくはないだろ?」
「……そういう意味で言っているんじゃないんだけど。アリアちゃんて鈍ちんだね。そんな呑気なら、大好きなご主人様が誰かに取られちゃうぞ!」
「はああぁぁぁ!? だ、だからいちいち戯言を申すな! 私はご主人様を信じている! 誓った忠誠は絶対なのだ!」
何やら捉え方が違うような気もするけど、まぁいいか。
なんだか二人の距離が縮まって仲良くなった気がする。
「――みんな楽しそうね」
「ウチらも混ぜて~」
いつの間にか、二人の女子生徒が屋上に上がってきた。
おや? 見覚えのある顔だぞ……。
「もしかして四葉さんに鈴音?」
「うふ、こんにちは、御幸くん」
「先輩ちぃーす!」
同じD班のメンバーだ。
軍服姿と違って、こうして見ると通常の……いや相当ハイレベルの美人系と可愛い系の女子高生だ。
「二人とも、どうして学校の服着てんの? まさか……今日、転校してきた三年生と一年生って」
「そっ、わたし達のことよ。学校でもよろしくね」
「昨日、説明したしょ? 先輩をサポートするって。そういう意味だよ」
なんだって……アリアだけでも目立つのに、また凄いことになったぞ。
ガチのハーレムじゃないか?
そういや、もう一人忘れているよな。
「ファティは? 彼女は何しているの?」
「あの子は
「どこでもすぐ祈り捧げちゃうし、他所かれ見ればガチの厨二病だからね。まだアリアの方が適応力高いね」
アリアだって普段から騎士道精神丸出しだけどな。
だからクラスでも彼女は「救世主に仕える厨二病」だと黙認されている。
「……御幸、この人達は?」
莉穂が訊いてくる。
陰キャぼっちの俺が、こんな美少女二人と知り合いなのだから疑問に思うのは無理もない。
しかしどう紹介した方が良いだろうか?
「わたし達は
「今度の週末、ダンジョンに探索するんだぁ。アリアも一緒だよ」
「DUN機関という私企業のギルドと異なる公企業の組織だ。ご主人様は我らと共にそこに所属している。理由は其方らも知っているであろう」
アリアの説明に、莉穂とサヤの二人は頷いて見せる。
「ダンジョン・ボスの討伐だね。そっか……御幸、頑張っているんだぁ」
「ガチ、ネットやニュースで言われている通りだね~。御幸くん、応援しているよん!」
「あ、ありがとう」
俺は笑顔を向けつつ、アリアの耳元に唇を近づける。
「……DUN機関のこと、そんなにぶっちゃけていいのか?」
「はい、非公式組織ですが秘密組織ではありませんので大丈夫です。建前上は行政から委託された公共団体だと、班長殿から説明を受けております」
つまり営利目的で活動するギルドとは異なる、公共の利益を優先として経営する組織という感じだ。
普段、諜報員っぽい活動もしているようだから秘密にしなきゃいけない組織かと思った。
なるほど、それで堂々と自衛隊のヘリが迎えに来るわけだな。
考えてみればダンジョン対策の組織であり人間社会に関わるわけじゃないから、ある程度はオープンなんだろう。
四葉と鈴音も周囲に「救世主の仲間」だと公言することで、日常でも堂々と近づき護衛とサポートをしやすくするという意図も込められているようだ。
男として美少女達に守られるってどうよって思うけど、ボスしか斃せないスキル持ちだから仕方ない。
こうして和気藹々と顔見知りになった感じで楽しく過ごせた。
◇◇◇
放課後。
下校するため学校を出ると、正門前がやたら騒がしくざわつき始めている。
「ん? 何だ?」
俺は首を傾げ、アリアと共に正門に近いた。
すると如何にも高級そうな赤いスポーツカーが大きな排気音を立て停る。
ハザードランプを点灯させドアが開かれ、運転席と助手席から二人の男女が降りてきた。
その容姿端麗から、野次馬の誰もが息を飲み見惚れてしまっている。
華やかで眩しい美男美女だ。
けどあれ? この人達って……確か。
「やぁ、御幸君」
「御幸さん、しばらくです!」
ああ間違いない。
「昌斗さんに早織さん!?」
S級ギルド【
兄の昌斗さんはオシャレな私服姿だが、早織さんは学校帰りなのか制服を着ている。
清潔感溢れる白を基調としたブレザータイプで、スカートは青色のチェック柄だ。
「おい、あの超可愛い子の制服……まさか聖雲学園じゃね?」
野次馬の一人がそう呟いた。
聖雲学園?
確か明治時代から古き歴史を持つ、由緒正しき私立名門校だ。
将来は日本を背負うであろう有能な人材が数多く就学し、幼等部から大学までのエスカレーター式で進学できるとか。
優秀であれば転入から編入また中途入学も可能で、卒業生は各界のあらゆる分野でトップの地位に就くことが多く、明らかに俺なんかとは住む次元が違う「ザ・エリート」高校だ。
それは良しとして。
「どうして、お二人がウチの学校に?」
「御幸さんに用事があって失礼ながら来ちゃいました」
「お、俺に?」
「ああ、そうだ。立ち話もなんだから俺の車に乗らないか? アリアさんだっけ? 良ければキミも一緒にどうだい?」
「私は構いませんが、ご主人様、如何なさいます?」
「わかりました。いいですよ」
俺は頷き了承する。
呆然とする周囲に見守られながら、アリアと一緒に昌斗さんの車に乗り込む。
スポーツカーは高音域のエンジン音を鳴り響かせ発進するのだった。
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